警察歯科医で県警部長表彰 河原悟さん

2002.04.28
たんばのひと

県警本部長から委嘱され、 身元不明変死体の検死や警察官への歯科知識の啓もう活動を行う 「警察歯科医」。 柏原署管内では一人。 長年にわたる活動の功労でこのほど、 「県警本部刑事部長表彰」 を受けた。 城崎町に住む同業者の兄とともに、 県警に警察歯科医の制度設立を呼びかけ、 一九八六年の発足当初から任務にあたっている。
●「一九八五年に群馬県で起きた日航ジャンボ機墜落事故で父を亡くしました。 その時にスタッフチームの献身的な努力に感動したことが、 制度の設立を呼びかけたきっかけ。 遺体は約二週間後に部分体で見つかったのですが、 親を探し出してもらったことに対する感謝の気持ちでいっぱいでした。 現場は口では言えないような壮絶な場面で、 悲鳴があちこちであがっていたのが忘れられません」
「柏原署管内では、 これまでに五件の変死体の検死を行いました。 首吊りの白骨死体と列車事故のれき死で、 身元は全件確認できました。 生きた人間の照合には指紋が確実ですが、 死体に関しては法歯学が有効。 九割以上の人が歯科治療にかかった経験があるので、 通っていたと思われる医院から資料を取り寄せて治療痕を照合します」
「歯から分かることは多く、 推定年齢や性別のほか、 歯のすり減り方で職業的なことも浮かび上がってきます。 また治療の方法によってある程度生活レベルも推定できる。 歯は生きている間に重要なのはもちろん、 死んでからも一生の記録として残ります」
「大規模災害や火災、 交通事故などはいつどこで起きるか分からない。 身元が分からずに苦しんでいる遺族に、 一日でも早く引き渡しができるよう、 すぐに出動して作業ができるような心構えをしておきたい」
○阪神大震災の時には、 数日後に県警から招集があり、 食糧や水、 寝袋を持って駆けつけた。 県歯科医師会で約七十件の検死作業にあたり、 チーム一丸となって、 警察歯科医制度の本領を発揮した。 遺族の気持ちが分かるからこそ、 大変な仕事を進んで引き受けている。 穏やかな話ぶりに、 確かな情熱を感じた。 氷上郡歯科医師会副会長。 山南町井原。 城崎町出身。(J)

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