150年ぶりに薪能を復活 上山和洋さん

2002.05.26
たんばのひと

 安土桃山から江戸時代にかけて厄除けや雨乞いの能が奉納されていた、 山南町和田にある狭宮神社の宮司。 住民有志のまちづくりグループ 「椎の実会」 が母体となり、 町や商工会などの団体に呼びかけて百人体制の実行委員会を組織し、 19日に約150年ぶりに同神社で薪能が復活上演された。
●「当日の朝はどしゃぶりの雨。 成功と安全、 天候回復の祈願祭を行い、 一生懸命に祈りました。 一時は屋内会場への変更も考えましたが、 神さまのお蔭をもらい、 最終決定する午後二時には晴れ間も。 みんなの心を一つにまとめた雨だったと思います。 それからの準備はあっという間で、 スタッフの懸命な姿を見てしばらく涙が止まりませんでした」
 「満足顔で帰って行くお客さんを見て、 “やってよかった”と実感しました。 神社の森全体が音響や演出効果を出し、 能の幽玄を引き出していたと思います。 『能は難しくてよく分からない』 という声をよく聞きますが、 実際に鼓や笛の音を聞きながら鑑賞すると、 テレビとは迫力が全然違います」
 「昨年四月に 『椎の実会』 の活動計画を作り、 3年、 5年後にでも実現できればという思いで、 能復活を提案したところ、 『すぐにやろう』 という話に。 年配の人から若い人まで、 各世代の人が一緒に取り組めたことが何よりよかったです。 一回きりではなく、 継続して上演できればうれしい」
 「和田には城や代官所、 石仏など、 観光名所がたくさんあります。 どんどん掘り出してアピールし、 薬草公園と合わせて遠くからも人を呼びたい。 また宮司として、 神さまに長年途絶えていた能をお見せしたいという思いがありました。 神仏を大事にすることで、 神さまのご加護もいただくことができ、 和田に必ずいい事が起こると思っています」
○「近い将来に実現すれば」 と提案した宮司の夢に、 「すぐに」 と応えた地元住民の心意気に感心する。 まちづくりには、 一筋縄ではいかない局面が必ずある。 薪能の復活は、 そんな時に“さみやさん”の神さまが見えない力を貸してくれる、 そんな奇跡の種になるかもしれないと感じた。 山南町和田。   (J)

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