帝塚山大学人文科学部教授 小山靖憲さん

2002.06.06
たんばのひと

熊野を世界遺産に 
帝塚山大学人文科学部教授 小山靖憲さん  (豊中市在住)
 
(こやま・やすのり) 1941年 (昭和16年) 氷上町 (旧幸世村) 生まれ。 柏原高、 東京教育大文学部卒、 同大学院文学研究科博士課程修了。 和歌山大教育学部教授 (現在は同大名誉教授) を経て95年より帝塚山大へ。
 
 中世史、 特に荘園研究が専門。 「荘園」 というと中学、 高校の教科書に必ず出てくるが、 なかなか説明が難しい。 「貴族や寺社の所領を指しますが、 1、 2ヘクタールの耕地だけのものから一郡規模、 九州などでは三カ国にまたがるものまで。 歴史的にも奈良時代の八世紀後半から16世紀までの間にさまざまな動きがあり、 支配の方式も変わる」 という。
 各地に遺る絵図や古文書に取り組み、 数々の研究書を著した。 「中世の寺社は、 公家や武家と並んで国家を形成する勢力として位置づけられ、 その意味からも荘園抜きに中世は語れないでしょう」。 丹波でも大山荘や小倉荘など重要な荘園が少なくない。 数年前、 「日本地名大系」 (平凡社刊) の 「兵庫県の地名」 編で、 氷上の中世の地名を担当した。
 長らく高校教科書の執筆にもかかわり、 「例えば鎌倉期の仏教建築や絵画でも、 ただ事実を羅列的に記述するだけでは面白くないので、 東大寺や興福寺が平氏に焼き討ちされ、 また再建されるなど、 できるだけ歴史の流れの中で変化を論じるように工夫した」。
 ただ、 「ますます詰め込み式の受験教育がひどくなって、 歴史の面白さを教える力量を持つ教師も少なくなっている」 と嘆く。 大学生の学力についても、 「一般に大学院修士課程が以前の学部レベル、 大学は高校レベル。 小さい時から活字になじんできていないのに、 漢文や古文書を読めと言っても無理」 と手厳しい。
 和歌山大時代から、 熊野地方を足繁く踏査。 2年前に岩波新書から出した 「熊野古道」 が3万8千部を数えるベストセラーに。 世界遺産指定のための学術調査委員として、 申請書づくりに余念がない。 「熊野は暗いイメージで捉えられがちだが、 古来の自然林は明るく快適。 その下で汗を流し、 温泉につかっていると、 世俗を忘れてリフレッシュできる」 という。
 丹波には時々帰る程度だが、 高校の同級会にはよく顔を出す。 「悪さした記憶ばかり」 と苦笑しながらも、 「歳を経るほどに、 懐かしさがつのりますね」。
(外野英吉)

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