揺らぐ病院-丹波地域の現状 1医師不足


医師減、1年で病院1つ分
「診たくても診られない」

 柏原赤十字病院 (柏原日赤) が、 外科で救急・入院患者の受け入れをやめた。 県立柏原病院も受付時間外の軽症患者の診察を控え、 小児科病棟を縮小した。 兵庫医科大学篠山病院も、 小児科医が、 夜間の急患を診られなくなった。 柏原病院の酒井國安副院長 (小児科) は、 「『診てくれない』 と言われるのがつらい。 本当は 『来たい人はどんどんきて』 と言いたいが、 医師が絶対的に不足している。 綱渡りで診療体制を維持しているが、 いつ破たんするか、 薄氷を踏む思いだ」 と訴える。

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 柏原病院は一年前四十二人いた常勤医師が、 今春から三十三人に。 柏原日赤でも、 十三人が十一人に。 二人の外科医がともに去った (現在は非常勤医で週四回、 外来のみ診察)。篠山病院は、二十七人が二十三人になった。 三病院で十五人が減少。 一年で病院一つ分に相当する医師が減った。医師の減員は、病院内だけの問題にとどまらず、 開業医の診療体制にも影響を及ぼしている。
 丹波市医師会は、 柏原病院に集中している時間外診察に訪れる患者の分散化をはかるため、 夜十時ごろまで、 開業医が軽症患者の診察を始めた。

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 急速な医師不足の原因は、 二年前から始まった新研修医制度にある。 同制度は、 地方への医師派遣の人材センターの役割を果たしていた、 大学の医局制度を壊した。 大学を通さなくても、 医師が自由に就職活動ができるようになったことで、 大学に残る人材が激減。 人材不足に陥った大学は、 派遣していた医師を呼び戻した。 柏原、 柏原日赤、 篠山の三病院は、 大学に全面的に医師派遣を依存しており、 引き揚げの影響をもろに受けた。
 最近の医師は、 専門医指向が強く、 多くの症例にあたれ、 技術を高められる都市部の病院に人材が集中している。 現状の制度が続けば、 都市部で医師が飽和状態になってからでなければ、 郡部の医師の充足は難しいとする見方が大勢で、 その時期は医療関係者の中でも、 「五年ほど」 と言う人もいれば、 「十年以上かかる」 と見る人もいるなど、 見通しが立たないでいる。

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 小児科、 産科、 麻酔科など、 もともと医師の数が少ない科では、 一人減っただけで、 他の医師に大きな負担がのしかかる。
 柏原病院の麻酔科医は、 今春まで、 常勤一人と非常勤一人だったが、 四月から神戸大からの非常勤医師の派遣が止まった。 柏原日赤の外科縮小の影響で手術は増えているが、 一人で引き受けられる限界があるため、 手術が滞り始めている。
 一人残った麻酔科医は西宮市からの通勤族。 帰宅後、 呼び出されて病院に戻ることが何度もあるといい、 この医師が、 けがや病気、 仮に引き揚げでもすれば、 同病院で手術ができない事態に陥る。
 同病院の山下晴央救急部長 (脳神経外科) は、 「タイミングが悪ければ、 頭部外傷のような急を要す患者でさえ引き受けられない。 切迫した、 深刻な事態だ」 と、 窮状を訴える。

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 患者を送り出す側の丹波市は、 二十四時間対応の救急搬送を、 山南、 市島、 春日、 青垣の四救急分駐所で行なうことをめざしている。 救急のネットワーク化は、 搬送先が確保されていることを前提に進められてきた。 久下悟同市消防本部消防長は、 こぼす。 「前提が揺らいでいる。 まるで、 病院が遠のいていくようだ」。
 丹波市で柏原赤十字病院の、 篠山市で兵庫医科大学篠山病院の存続問題が浮上している。 医師不足や赤字で、 県立柏原病院を含む丹波地域の総合三病院が大きく揺らいでいる。 現状と原因を探る。