揺らぐ病院-丹波地域の現状 5展望

2006.06.25
丹波の地域医療特集

このままでは「共倒れ」
話し合いなく深刻化

 柏原、 柏原日赤、 篠山の三総合病院が、 今のような形のまま、 そろって今後も存続できると考える丹波地域の病院関係者は少ない。 三病院とも医師、 患者をつなぎとめるのが困難だからだ。
 すでに、 柏原病院四十三床、 柏原日赤八十床、 篠山病院二十二床は、 使われておらず、 病院一つ分に相当するベッドが“遊んで”いる。 ベッドを埋める患者も、 それだけの入院患者に対応できる医師も確保できていない事実を物語っている。
 丹波地域の人口は減り続ける。 医療費の伸びを抑えるため、 国は、 患者負担を増やして医者に行きづらくし、 同時に医療機関へ支払う診療報酬を下げる。 病院は今以上の効率化を強いられるが、 さまざまな疾病に対応する総合病院は、 人、 機材を多く抱えざるを得ず、 経営は厳しさを増す。

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 病院は、 生き残りをかけ 「役割分担」 するのが全国的な流れだ。 「似たり寄ったり」 の標榜 (診療) 科を持ち=表参照=、 それぞれの科の専門医不足に悩む三総合病院。 柏原兼篠山健康福祉事務所の佐藤守所長は、 「このままでは、 共倒れしかねない」 と警鐘を鳴らす。 危機を乗り切るには、 例えば三病院に二人、 一人、 一人と分散している小児科医を一病院に集めるように、 「診療科を再編し、 分散している医師、 機材を効率的に配置することが必要」と説く。 「それぞれが得意分野を明らかにし、 できないことは他病院に任すべきだ」。
 赤字を解消し、 公設民営化の成功例として注目される福知山市の新大江病院 (七十二床)。 難しい病気は福知山市民病院 (三百五十四床) に任せ、 老人医療を中心に展開している。 同病院の竹村周平理事長 (丹波市出身) は、 「中核病院を一つ決め、 赤字覚悟で設備、 人的充実をはかるべき。 大きな病院は近所に必要ない。 近くには、 便利で融通のきく病院があればよい」 と、 公立病院を充実させ、 他の病院がいかに 「住み分けるか」 を考えるべきと指摘する。

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 丹波市の田中潔医師会長は、 「柏原病院と柏原日赤の経営トップは、 共に井戸敏三県知事。 経営統合はできないのか。 本気で検討してほしい」 と言う。 長年の懸案だが、 この問題について話をする場すらないのが実情だ。
 丹波、篠山両市長、両医師会長、 輪番に参加している五病院長らが名を連ねる 「丹波圏域健康福祉推進協議会」が、丹波地域の医療を検討する“最高機関”だが、 会の設置目的にない病院の再編問題などは取り上げられない。
話し合いもないまま、 事態は深刻さの度合を増す。

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 <篠山、 柏原日赤両病院が経営難で撤退。 残された柏原病院も、 過重労働に耐え切れなくなった医師が集団離職し、 診療閉鎖に追い込まれる>-。 丹波地域にとって最悪のシナリオだ。
 柏原病院の勤務医には、 地元出身者が四人いる。 最年少は、 小児科の和久祥三医師 (39)。 二十歳代後半の三年間同病院で勤務し、 二年前から二度目の勤務をしている。 八年ぶりに戻った故郷の病院は、 建物こそ以前のままだが、 中身は大きく変わっていた。 都市部の病院ではなかった、 内科医など主要科の医師不足を目の当たりにし、 強い危機感を抱いている。
 和久医師は、 「市民が寄りかかっている病院は以前のような“丈夫なロープ”ではなく、 今やいつ切れるか分からない“細い糸”という現実に目を向けてほしい」 と訴える。 糸が切れてから (病院がなくなってから) 事の重大性に気づいても手遅れという警告、 細い糸でも切ってはならないという自戒が交錯する。

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 六月末で柏原病院の常勤医がまた一人減る。 他の病院でも、 医師の引きあげが確実視されている診療科がある。 「揺らぐ病院」 の足元が固まる兆しは見えない。 =おわり=
(足立智和、 徳舛純、 芦田安生が担当しました)

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