今年度の農業ジャーナリスト賞を受けた「国民のための百姓学」(家の光協会)

2006.12.27
丹波春秋

今年度の農業ジャーナリスト賞を受けた「国民のための百姓学」(家の光協会)の著者、宇根豊さんが授賞式で、草刈の時飛び出してくるカエルの話をした。▼「そのたびに私は作業を躊躇して立ち止まる。その時間が半日で計10分だったとして、農学者は『米の生産効率を落とす』と言い、生態学者は『その程度の時間なら、カエルを殺しても何の影響もありませんよ』と言うだろう」。▼「しからば、カエルに躊躇するなんてことは無駄な行為なのだろうか。いや、そうではないはずだ。もし平気で作業を続けたなら、私の生き物への情感は薄れ、稲のまわりに広がる天地有情の世界と、米やご飯との関係が見えなくなる」。そしてそのことを学ぶのが、「百姓学」だと。▼先日、篠山で開かれた「イーハトーブのコウノトリ―宮沢賢治に学ぶ人と生きものたちの共生」というセミナーで、コウノトリの郷公園地元の豊岡市祥雲寺地区の稲場哲郎区長の話を聞きながら、宇根さんの話を思い出した。▼「コウノトリを絶滅させた農業のやり方を転換しよう」と集落の全員が思い立ち、農薬を使わず、田んぼに魚や虫がわんさと戻ってくるやり方を採用。やがてコウノトリが住める環境が戻り、子どもたちが「ここに住んでよかった」と思うようになった。まさに「百姓学」の実践だったのだろう。(E)

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