会社の上司が大きな仕事をやりとげて、部下より先に帰ろうとする。

2006.12.27
丹波春秋

会社の上司が大きな仕事をやりとげて、部下より先に帰ろうとする。そのとき、部下が上司に対して「ご苦労さまでした」というのは正しいか-。こんな問題がかつてNHKの番組で取り上げられ、出演していた作家の清水義範氏は、「正しい敬語ではない」とした。▼「ご苦労さま」は、ねぎらいの言葉であり、目下の者が目上をねぎらってはいけないからだ(清水氏著「行儀よくしろ」)。手元の国語辞典にも「目上の人に対しては、『ご苦労さま』ではなく『お疲れさま』が一般的」とある。▼しかし、番組の放映後、視聴者から「なぜ、ご苦労さまではいけないんだ」と、反論がどっと寄せられた。反響の大きさに清水氏はその後、『持論』を強く主張しなくなったという。先ごろ文化庁が発表した「国語に関する世論調査」でも、「ご苦労さま」に違和感のない人がめだつという結果が出ていたから、これが世の流れなのだろう。▼「かわいい子には旅をさせよ」の意味を、「見聞を広めるいい旅を子どもにさせるべき」と、自分に都合のいいように解釈する若者がいるそうだ。昔と比べ、子どものしつけに対して親が甘くなり、親子の縦の関係がゆるやかになったことが、この曲解の背景にあろう。▼とすると、「ご苦労さまでした」と言うのも、上司と部下の関係のゆるみかもしれない。(Y)

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