先ごろ篠山市で講演した前県知事の貝原俊民氏が、21世紀の日本の課題として食糧問題をあげていた。

2006.12.27
丹波春秋

先ごろ篠山市で講演した前県知事の貝原俊民氏が、21世紀の日本の課題として食糧問題をあげていた。貝原氏によると、日本の穀物自給率は28%で、先進諸外国に比べて格段に低い。中国は95%あるが、工業化の進展で5、60%に低下するとの予測もある。そうなると、世界の穀物自給率がひっ迫するのは必至だ。▼さらに戦争などの国際情勢の変動があれば、今のように穀物の輸入ができるのか、はなはだ疑問。貝原氏は「食糧安全保障はしっかり考えるべき問題」と指摘した上で、「都市住民も農業に目を向けるべきだ」と訴えていた。まったく同感だ。▼かつて「都会が働いて田舎を食わせている」というような農政批判が平気で言われていた。都市から農村にお金が流れているという一方的な見方が強調され、農村から都市に流れているものが見落とされていた。都市住民の命を支える農作物だ。▼2001年の都道府県別食料自給率によると、東京は1%、大阪は2%、神奈川は3%に過ぎない。大都市圏の膨大な人口の胃袋は、農村によって満たされている。▼1181年、京都を大飢饉が襲い、4万人以上が餓死した。その様子を目の当たりにした鴨長明は、「京都の市民生活は、何事につけてもすべて田舎を頼りにしている」と言った。その構図は今も変わらない。(Y)

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