東京に家族で旅行し、我が家に戻ったときのこと。

2006.12.27
丹波春秋

東京に家族で旅行し、我が家に戻ったときのこと。旅行自体は楽しかったという小学生の愚息が、東京よりも田舎がいいと言う。理由を聞くと、「東京には山や田んぼがないから」。都会になじめない親の血をひいているとおかしくなったが、さもありなんと思った。山や田んぼが広がる緑の風景は、人間の心の奥底にある風景だからだ。▼私たちは、緑の中に身を置くと、やすらぎを覚える。その理由について河合雅雄さんは、「人間はサルの子孫だから」と説明する。緑に囲まれて暮らした先祖の遺伝子が組み込まれているから、人は緑の風景にふるさとを感じる。そのふるさととは、私たちを形作る無数の細胞に記憶されている遠い過去の風景に他ならない。▼緑は目にいいと言われる。長時間パソコンに向かい、目が疲れると、遠くの山を眺めるといいという。緑の風景が人間に与える心理的効果は、体の疲れもいやしてくれる。▼かつて都営バスの車体の色をめぐって「騒音」ならぬ「騒色」論争が起きた。車体を、明るい黄色にえび茶色の帯を配したデザインに変更するとの都の決定に、「騒色」との声が上がったのだ。▼騒音と同様、騒色も人を不快にさせるが、幸い丹波地方は騒色公害からまぬがれている。時あたかも新緑の候。すがすがしい緑にひたり、心身をリフレッシュしたい。(Y)

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