過日、検診を受けたとき、保健師さんから「お酒の量が過ぎていませんか」と指摘された。

2006.12.27
丹波春秋

過日、検診を受けたとき、保健師さんから「お酒の量が過ぎていませんか」と指摘された。ひとしきり注意を受けたあと、「日本人は元来、お酒に弱い体質なんです」と言われた。そのことは当方も承知していた。なんでもアルデヒド脱水素酵素というのが日本人はもともと少ないらしい。▼この酵素が十分にあれば悪酔いをせずにすむのだが、不幸なことに、日本人はヨーロッパ人の半分ぐらいしかこの酵素を持っていない。でも、それは平均的な日本人のことであって、当方は「例外」とうそぶいていた。自分に都合のいい口実だ。▼「酒は百薬の長」は、酒飲みの口実に重宝される言葉だ。度を過ぎた飲酒が良くないことは、百も承知。しかし、酒は百薬の長と自分に言い訳しつつ杯やグラスを重ねるうちに自制がきかなくなり、適量を越えてしまう。▼「酒はいいものだ。毒の中では一番いいものだ」と言ったのは、大正期の小説家の葛西善蔵。家庭を犠牲にして破滅的な生活を続け、生涯、貧苦と病に苦しんだというから、真に迫った言葉だが、私小説家になれない凡人は適量でとどめるのが賢明だ。▼「酒の相手に話の相手 苦労しとげて茶の相手」。人間が練られると、こんな渋い味わいの域に達するのだろうが、新茶の時期なのにビールに手が伸びる当方はまだまだ未熟。(Y)

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