「人生は劇場、自分が主役」「今にこの業界を正式に認知して見せる。

2006.12.27
丹波春秋

「人生は劇場、自分が主役」「今にこの業界を正式に認知して見せる。所詮はカネを動かすだけの仕事だが」。こううそぶいたのは、堀江貴文容疑者ならぬ山崎晃嗣(あきつぐ)。終戦直後華々しく登場し、「アプレ・ゲール(戦後派)」という流行語を残して自ら命を絶った「光クラブ」事件の主役である。▼東大生の身で金融業を起し、庶民から集めた金を法外の高利で貸し出した手口は、今ならごく単純に見えるが、戦後の混乱期には珍しかった『学生企業』がうけ、またたく間に銀座に会社を移すまでに成長した。▼しかし所詮は官憲にマークされる運命。一旦は釈放されたものの債権者が殺到、投資家にはそっぽをむかれ、切羽詰って青酸カリを飲む羽目に。軍隊での不条理な体験がもとで『義理人情』を捨て、冷徹な合理主義を決め込んだ山崎の生き方は、小説やドラマにも取り上げられた。▼歴史のかなたに沈んでいた山崎の像に、今またライブドア事件が光を当てる。「真説光クラブ事件」の著者保阪正康氏が分析する、山崎が「憎んでいた」時代とホリエモンの時代はおのずと異なるし、一見似た言動の両者が情念でどう共通するかは不明だ。▼ただ、行方定まらぬ不安さの中に、『ヒーロー』を待望する機運。事件を醸成した双方の社会にそんな遺伝子が嗅ぎ取れるような気がする。(E)

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