経営感覚

2007.01.21
丹波春秋

 カメラの設計から起業して医療用光学機器の世界的なメーカーとなり、社員50人余りなのに高い収益を上げているコーナン・メディカル(西宮市)の池上吉藏・前社長の講話を聞く機会があった。▼同社の経営については、「最強のスモールビジネス経営」(ダイヤモンド社)で紹介されるなど、つとに知れ渡っているので、ここではあえて触れない。感銘を受けたのは雑談になってから、「神戸大震災で焼け太ったのは、うちぐらいでしょうな」と、冗談交じりに漏らされた言葉だ。▼同社の製品は大変な高付加価値なので、普通の損害保険ではとてもペイしない。「機会損失保険」という概念が日本の保険会社にはなかったが、ちょうど規制緩和で商品が多様化して来た折、外資系の会社に特注で設けてもらった。▼震災で同社の製品は大きな損害を受けたが、加入数カ月後だったこともあり、補ってあり余る支払いを受けた。「でも、あぶく銭を手にしてもろくなことはない。少しを社員の慰労に充てたほかは、母校の大学に寄付しました」。▼真似難いのは、ここである。同社が高収益を上げるようになったのには様々な要因があろうが、基本は、経営者が「真っ当な」感覚を持っていてこそだったのだと思う。どこかの建築関連の経営者たちに、池上さんの爪のアカを煎じて飲ませたい。(E)

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