「病識」

2007.01.29
未―コラム記者ノート

連載「揺らぐ病院」の取材中、医師から「病識」という言葉を教わった。「病識がある」とか「ない」とかいう使い方をする。「病識がある」人は、自分が病気であることを知って(気付いて)いる人、状態を言う。 書ききれなかったことがたくさんある。「学閥」も、その一つだ。「医師を集約し、病院間で役割分担を明確にすべき」と、医療関係者は口をそろえるが、医師の世界では、「出身大学を越えた連携」は難しいとされる。例えば2病院を統廃合すれば、片方の病院の医師は引き上げる可能性が高い。市が強力な支援策を打ち出し、市民が、相当の熱意をもって医師の残留を訴えても、実現できるかどうか、分からない。しかし、それが地域医療を守る道だ。 「病識」を持った人が次にすべきことは「治療」だ。「地域医療は、地域住民自らが考える問題」と言われる。住民は、地域の医療問題に関心を持ち、医療機関を適切に選ぶ。行政は責任、医師会は役割を果たす。病院は、我田引水をやめ、地域にとって最善のあり方を模索する。力を結集しなければ、向上はおろか、今の医療水準の維持すら難しい、と感じる。(足立智和)

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