「夜と霧」


 柏原高校生の山本俊一郎君が読書感想文コンクールで全国二位に入った。その作品の題材は、精神医学者のフランクル教授が書いた「夜と霧」。同書は、ユダヤ人のフランクルが強制収容所にとらわれたときの過酷な体験を記したものだ。▼精神的に不安定になった囚人たちに、フランクルが語りかけるくだりがある。フランクルは「最後の時が近づきつつある我々を見つめてくれている人がいる」と語る。それは「一人の友、一人の妻、一人の生者、一人の死者…一つの神」だ。そして、その者たちは、我々が最後まで誇りを失わないことを期待しているという。▼愛する者と自分がつながっているという認識が、囚人の心をなぐさめた。絶望的な極限状況にあっても、人は孤独ではない。断ちがたい絆で結ばれた者がおり、その者のためにも今の苦悩をおおしく引き受けなければならない。▼この宇宙の中で自分はひとりきりではないことを実感できれば、その人は救われることを教えてくれる。しかし、もし、ひとりきりだと思い詰めれば、その人の心はどうなってしまうか。▼問題行動を起こす少年少女の家庭環境は崩壊していることが多いと聞く。愛する者、愛してくれる者がいない。だからこその問題行動であり、そんな絶望下に置かれた者が現代、多くなったように思えてならない。  (Y)