丹波市長・市議選特集3 「人口減少」

2008.11.10
ニュース

  「このまま行けば、 20年もしないうちにこの集落は消滅してしまう」。 愛着ある集落の将来を憂う自治会長―。 「地元の学校に行かせるべきか、 違う地区に行かせるべきか、 今一番の悩みの種です」。 子どもが通うことになる小学校を選ぶのに真剣に悩む母親―。 歯止めが利かない人口減少、 少子高齢化。 その弊害は、 現実問題として表面化し、 集落運営や教育などに影響を及ぼし始めている。
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  「限界集落? 初めて聞く言葉です」。 市担当者の言葉を受話器越しに聞いた、 青垣町の岡見自治会長の桑原淳治さん (60) は 「市職員が限界集落を知らないのか」 と憤慨した。 65歳以上の人口が集落の50%以上を占め、 共同体の維持が危ぶまれる限界集落になる中、 市が求める男女共同参画推進員の選出に苦慮した末、 相談のためにかけた電話だった。
 岡見集落 (24戸、 59人) は、 60歳以上が39人、 40、 50歳代合わせて10人、 小学生3人、 中学生3人、 高校生1人。 うち独居老人は7人で、 20―30歳代の3人は、 住民票はあるものの、 進学などで現在は集落にいない。
 自治会長、 公民館長、 人権啓発委員、 保健衛生推進員など、 集落の役員数は17。 数人が複数の役員を兼務しているが、 それぞれが仕事を抱える中、 十分に機能しているとは言えず、 任期切れによる新役員の選出に毎年奔走する。 田畑を耕すのは高齢者ばかりで、 後継者問題も深刻だ。 「隣近所で声を掛け合い、 助け合いながらなんとかやってきた。 しかし、人口の減少で今は、集落そのものが存亡の危機にある」。
 今年2月末の市全体の高齢化率は、 27・5% (県発表)。 2005年から1・6ポイント上昇しており、 右肩上がりはとどまるところを知らない。 桑原さんは、「このままでは、市自体もいずれ岡見のようになる」 と警告を発する。
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 住民基本台帳、 外国人登録法に基づく人口では、 合併後4年間で、 約2000人減少 (表参照)。 国勢調査なども含めて県が算定する推計人口では、 06年時点ですでに7万人を切っている。
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 岡見集落も校区に含まれる遠阪小学校では、 2学年で同時に授業を行う市内初の 「複式学級」 が目前に迫る。
 同校の1年生は6人。 来年度の入学見込み児童は4人で、 国が定める法律では、 すでに再来年度の複式化は決定的。 さらに、 区域外通学を申請し、 入学見込み児童のうち2人が他校へ入学することになれば、 来年度から複式化をせざるを得ない。
 少人数だからこそのメリットもある。 教諭の目が行き届くこと、 地域とのつながりの深さ―。 しかし、 ある入学見込み児童の保護者は、 「保育園や幼稚園での友達がいる他校の方が、 子どもにとっていいのではないかと思う。 中学校に入って、 グループでの活動がうまくできるか不安」。 一方で、 「少人数のメリットもわかるし、 どちらがいいのか決めかねる」 と複雑な心情を吐露する。
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 人口減少の影響は、 集落や教育現場だけではない。 ▽市民税などの地方税が減少する一方、 高齢化による医療費、 介護保険料の増加▽労働者人口や消費者が減ることによる商業の冷え込み▽まちの活力がなくなる―など、 生活の根幹に直接打撃を与えるものばかりだ。
 市は総合計画で、 2015年の目標人口を7万人に設定し、 企業誘致、 子育て支援、 I、 Uターン者支援など、 さまざまな施策を講じてきたが、 ブレーキは利かない。
 市は、 「短期間で成果が出せないため、 どこの自治体も苦慮している。 今後も企業誘致や子育て支援事業などを通して人口増に取り組んでいく」。 最大の課題で、 目に見える成果が出づらい人口減少問題。 大胆な施策が迫られている。 (森田靖久)
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 医療、 ごみ、 人口減少―。 生活に直結した喫緊の課題の解決に向け、 決断が求められるリーダーを選ぶ選挙が、 きょう9日、 告示される。

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