助け合いの心


 つい先日、サウナでのこと。年配の男性2人が、共通の知り合いが自殺したことを話していた。狭いサウナ室なので、会話が耳に入る。どうやら知り合いは経済的に困窮したらしい。男性の1人が話をつないで言った。「金は天下の回りもの、は昔のことや」。▼ちょうどそのころ読んだ本と重なるところがあった。アメリカ先住民のラコタ族の文化を紹介した『ともいきの思想』(阿部珠理著)だ。▼ラコタ族には「ギブ・アウェイ」という伝統の儀式がある。自分が持っているものを人に与えつくす儀式だ。病気の平癒、息子の戦場からの無事な帰還などに感謝して、それぞれにギブ・アウェイを行い、その儀式にやって来た人たちに生活必需品や家電品などを与える。しかも、社会的弱者には最初に一番いいものを贈る。▼ギブ・アウェイに差し出した品が、巡り巡って自分のもとに戻ってくることもよくあるらしい。ものが停滞することなく、循環している様子は、「金は天下の回りもの」そのものと言える。▼ラコタ族は全般に貧しい人たちだ。ラコタ族の保留地では人口の約8割が何らかの生活保護を受けているが、餓死する人はいない。助け合っているためだ。おそらくラコタ族にとって、生活苦ゆえの自殺は異国の話に違いない。異国の一つが我が日本である。(Y)