「塞翁が馬」


 車いすで生活する永井幸(みゆき)さんが、足が思うように動かない高齢者に、歩行を少しでも楽にしてもらうボランティアを実践している(丹波市版12日付)。車いすに乗っている永井さんと会話を楽しみながら、手押し車代わりに車いすを押してもらうというものだ。▼車いすであることが、人の役に立つ。その柔軟で多面的な発想に感じ入った。「塞翁(さいおう)が馬」の教えに通じる点があるように思う。▼悪いことがあれば、そのうちにいいこともあるという教えと理解されている向きもあるが、本来はそうではない。「塞翁が馬」に登場する翁は、息子が足の骨を折ったことについて、悪いことであると同時にいいことでもあるとする。出来事は、状況や環境によっていいことにも悪いことにもなる。足の骨を折ったことは不幸なこと、といった固定的な見方を排して多面的にとらえることの大切さを教えているのだ。▼車いす生活者は、支援される側。これもまた固定的で一面的な見方に過ぎないことを、車いすであることで人を支援している永井さんのボランティアが教えてくれる。▼車いすを押してもらっている光景に、永井さんが介護されていると見る人もいるだろうが、永井さんはそれでも「かまわない」という。このコメントにも感じ入った。(Y)