柏原看専廃止に不安の声 地域の人材枯渇を懸念

2011.10.23
丹波の地域医療特集

 県病院局が、 来年4月入学の新入生が卒業する2015年3月末で廃止を決めた県立柏原看護専門学校 (丹波市柏原町柏原)。 唐突な発表に、 困惑、 惜しむ声が上がっている。 同局は、 12月に近畿厚生局に学生募集中止を届け出る。 丹波地域唯一の専門学校が消える。 地域に与える影響や、 看護師に志す人たちに与える影響を追った。

◆県立柏原病院

 県立病院は、 昨年度も3次まで募集を行うなど、 全体では慢性的な看護師不足が続いている。 県病院局の藪本訓弘経営課長は、 「県立柏原の看護師は充足している」 という。 これは、 許可病床300に対し、 運用が130床と半分以下に縮小を余義なくされているからだ。 看護師数 (4月1日) は、 正規が137人、 臨時・日々雇用が13人。 116床運用だった昨年から正規を11人増やした。 260床運用だった07年度は209人だった。 稼働病床を増やそうとすれば、 看護師不足に直面する。

◆医療・介護

 田中潔丹波市医師会長、 石井敏樹副会長は、 廃止後、 ただちに影響は出ないが、 地元に根付く看護師が減り、 将来は、 市内病院や開業医に看護師不足の影響が出かねないとの見解で一致する。 同校卒業後、 すぐに市内の開業医や民間病院で働く人はいない。 出産、 育児などで離職し、 「潜在看護師」 となった人が復帰する際、 地元の医療機関との関係が生じる。 地元から養成機関が消えれば、 「潜在看護師不足」 「人材発掘困難」 に陥ると危惧する。 石井副会長は、 「柏原看護があるから地元の人はもちろん、 市外から丹波市に来た人で、 結婚し、 家庭を築き、 地元に根付いてくれている人が一定割合いる。 閉鎖されたら、 地域に新しい看護師が増えなくなる」 と危機感を募らす。

 老人保健施設など、 介護の現場でも看護師は欠かせない存在。 丹波市介護保険事業者協議会の千葉由美子会長は、 「泊まり勤務があるところは看護師の確保が難しい。 地元の学校が閉まって流出すると、 戻って来る人が減る。 子育てを終え、 再び働こうという人たちも減ってくるのでは。 介護事業所も人材確保が難しくなる」 と、 同じ見方をする。

◆受験生

 丹波地域の高校からの同校への志願者 (卒業生を含む) は、 2007―今春入学の11年度までで、 ▽柏原=71人 (入学29人) ▽篠山鳳鳴=24人 (同13人) ▽氷上=6人 (同1人) ▽篠山産業=18人 (同1人) ―。

 同校志望者が最も多い柏原高校の進路指導部は、 「ほかを探さねばならなくなる。 近くで学費も安い公立の播磨看護専門学校 (加東市) はレベルが上がるだろう。 公立では、 宝塚市立看護専門学校 (宝塚市) もあるが、 今でも難しく、 さらに学力が必要になる。 学力が達しない生徒は、 私学の専門学校や、 遠方の養成機関に受け皿を求めざるを得なくなる。 通学できなくなり、 親御さんの負担も増す」 と懸念する。

 篠山鳳鳴の進路指導部は、 「通学可能な阪神間に看護系の学校が多いので、 柏原高校ほどの影響は出ない」 と見ている。 一方、 「地元という理由や、 学力的に自信がない生徒の受け皿になっており、 改めて考えると、 近くにいいところがあった」 と惜しむ。

◆志向と現実

 看護専門学校より、 4年生大学への進学志向が強いとされるが、 丹波市の高校では、 専門学校に進学する生徒が多いのが現実。 柏原高校で07―10年度、 49人が看護専門学校に進んだのに対し、 短大・大学は35人だった。

 看護師資格が3年で取れる専門学校は、 費用や学力の面から一定の人気がある。 柏原看護の07―11年度の実質倍率は、 最も低かった09年度で1・7倍。 10年度は2・3倍、 11年度は3・3倍の狭き門だった。

◆経済負担

 県立看護大の年間授業料が53万5800円。 県内の私立看護大は、 年額160万円が中心。 私立専門学校でも、 初年度100万円以上かかる。 年間12万円と格安な同校は、 社会人らが看護師資格を取得する再チャレンジの格好の場所になっていた。

◆市の対応

 入学者に占める高校既卒者は、 11年度11人、 10年度16人、 09年度11人と3分の1を占める。 その中には、 ▽働いて貯めたお金で学費が工面できた▽経済的に逼迫したため大学を中退し、 手に職を求めて受験し直した▽家庭に入っていたが、 社会貢献したい―と、 様々な背景の学生がいる。 高い学費では挑戦できなかった人たちにも門戸が開かれてきた。

 同校の久下亮介副校長は、 「モチベーションが高くても費用の問題で断念する人が出てくる。 やる気のある人の芽を摘むことになる」 と悔やむ。

 辻重五郎丹波市長は20日、 初めて市議に説明。 6月に廃止の可能性があると聞き、 3度県庁に出向き、 反対を表明したことや代替案を提案したと報告した。 議員は、 「廃止撤回を求めるべき」 「一方的だ」 と県病院局を批判した。 辻市長は、 「県の事情があるとはいえ、 市としては遺憾」 とし、 市としての意見を述べるため、 内部検討を近く始める。

 

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