時代の風景


 柏原出身の川端謹次らの「昭和の風景」展(17日まで植野記念美術館)。川端の絵はいつ見ても、光の描写にうなってしまう。風景、人物、静物、どれをとっても。雪や霧にさえ光が感じられる。▼「昭和の風景」には、様々なことが含まれよう。筆者の主観では、光の色もそのひとつかもしれない。川端には、あの柔らかな光がどうして出せるのか。野外で水彩画を描く様子を撮影したビデオが、その秘密を明かしてくれる。スケッチの段階から、手が実にせわしなくリズミカルに動く。▼新緑の森の池。中ほどに通る板橋を、釣り人らがゆきかっている。数本の筆をひと時も休ませずパレットと往復させて全体を塗っていき、足りない部分を太めの鉛筆で補う。人影も素早くとらえ、またしばらく筆で塗り重ねて、へらで削って出来上がり。▼ところで、中村草田男の名句「降る雪や明治は遠くなりにけり」は、明治が代わって20年後の昭和6年、母校の小学校を訪ねた時の作という。降りしきる雪の情景に、政治経済社会の転変への感慨を重ねあわせたそうだ。▼「昭和最後の秋のこと」(阿久悠作詞)で森進一は「山の紅葉に照り映えて 色づく夢がまだあった」と歌う。平成もいつの間にか25年。世紀の大台さえ1つ進み、世の転変はいよいよ激しい。昭和は遠くなりにけり、か。(E)