追手神社(篠山市大山宮)

2016.02.04
中井一統特集

 祭神、大山祇命。創建時不詳だが、紅葉がたけなわの頃には、国道176号線から大きな銀杏の木の黄色い色彩がいやでも目に入ってくる。ここは植生豊かなところで、珍しい植物も群生し、中でも、千年モミは日本一で、天然記念物として平成元年に指定されたものだ。また、ここには和泉式部の伝説も残っており、福知山市の三俣の生野神社近くでの伝説もあるとおり、往時は京と丹後地方を結ぶ重要な街道であったのだろう。社殿はコンパクトな感じがするが、穴太積みによる石垣は美しい。
 社殿が小さいゆえ彫り物も少ないが、蟇股にある彫刻が面白い。鳥の羽とおぼしきものを口に挟んだ唐獅子が誠に垢抜けしたものだ。他に梁に噛みつく獅子噛み、波の上を飛翔する海鵜も秀作。脇障子がいい。女性が琵琶を手にして竜に乗っている。古老が蛇を左手に持ち上げている。珍しい構図である。裏面に「栢原住人中井権次橘正貞」の銘がある。
元高校教諭 岸名経夫

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