粟賀神社(丹波市氷上町中野)


  創建時不詳。祭神「日子穂々手見尊(ヒコホホデミノミコト)」、県道を達身寺の方へ進んだ所の山裾に鎮座する神社。往時から農村地帯の穏やかな雰囲気が感じられる落ち着いた地域である。石段を少し上がった所に社殿がある。清楚な中にも存在感が満ちている。
  拝殿背後の本殿の向拝をうかがう。まず気が付いたのは、彫り物の数は多くないが、根幹になる彫刻がしっかりしつらえられている。中央に左前方を睨む竜がいる。中央に宝珠をしっかり握り、髭を真上に立て“いらか”を強調している。誠に「正胤」そっくりの作風である。木鼻には定番の唐獅子と獏が、力強く迫ってくる。脇障子には、よく視ると阿吽の鶴が崖の上に休み、別の鶴が松の木の上を飛翔している。昭和5年(1930)改築時の記念板額に、8代目正胤の弟子であり相方で、和久定吉「橘」正則の銘が墨書されており、2年前に亡くなった親方からの独立第1作だ。感慨深いものがある。
中井権次研究家 岸名経夫