熊野神社(福知山市大江町公庄)

2016.10.27
中井一統特集

 国道175号公庄の集落の鳥居のあるところから石段を上がって小高い丘に鎮座する古社。創建は用明天皇の第2子麻呂子親王の臣によると言われている。祭神、イザナギの命、イザナミの命。本殿は覆い屋に覆われて比較的狭いが、彫り物は建物の左右、上部に多彩に施されている。
 向拝の竜を見上げる。広い梁間を生かして力強く、全体が前に溢れるようだ。首を左前方に高く掲げ、目は赤色を帯び、舌を持ち上げ、大きな爪を拡げ、宝珠を抱えている。木鼻は唐獅子と獏と象の2種類で素晴らしい。蟇股には、海上の波の上を飛翔する鶴、琵琶湖上を奔る兎が見える。屋根の梁を支える力士の姿も微笑ましい。8代目中井権次橘正胤の秀作である。この社で注目すべきはユーモア溢れる狛犬である。宝暦9年(1759)に笏谷石(越前石)で造られ、三国湊から由良川を経てここに設置された。北前船の幅広い交易の力が偲ばれる。
中井権次研究家 岸名経夫

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