郷土との絆

2017.10.14
丹波春秋

 「鬼の架け橋について話してほしい」と頼まれ、過日、柏原町の崇広小学校に出向いた。話す相手は小学1年生。

鬼の架け橋の近くに明智光秀が築いた金山城について話し始めたとき、驚いた。光秀が仕えた織田信長の名を知る子が多くいたのだ。

 さらに驚いたのは、柏原藩の初代藩主、織田信包を知る子が少なくなかったことだ。信長の弟であることも知っていた。相手は小学1年生である。我が身の当時を顧みると、感嘆の一語に尽きた。今は昔と比べ、郷土について学ぶ機会がずいぶん増えたのだろう。

 哲学者の西田幾多郎の言葉に、「知と愛とは同一の精神作用である。物を知るにはこれを愛せねばならず、物を愛するのはこれを知らねばならぬ」とあるように、知と愛とは不可分の関係にある。郷土を知ることで、郷土を愛する心が育てばと願う。

 この地に生まれたのは一つの縁。住んでいるのも縁と言えなくない。縁あってこの地と結ばれたのだが、郷土を知り、郷土を愛することで、縁とはまた別のつながりが生まれる。絆と言ってもいいつながりで、郷土との絆は、その人の存在を基底で支えてくれる。

 郷土学習に励む子どもたち。大きくなって、この地を離れたとしても、子ども時代に築かれた郷土との絆が心の支えになる時があろう。(Y)

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