顕本法華宗、了圓寺(綾部市西町)

2017.11.02
中井一統特集

 綾部駅から東へ少し行った西町に佇む名刹である。家々が重なる集落に、こんな大きな寺域があるとは驚きである。広い墓地もあるが、堂宇の大きさには、目を奪われる。四百年ほど前に創建されたらしいが、当時から、政治的な力があったらしい。庫裏に案内されてまず目に入ったのは、「乾坤活溌」と書かれた額。松菊と号する、伊藤博文揮毫の額である。

 本堂中央の向拝部分は巨大なもので、3メートルもあろうかと思える竜が居る。やや右下方を威嚇し宝珠を左に、髭は銅線、少し赤く見える舌をピンと立て、尻尾の“いらか”を右後ろから、左側に巡らせている。ど迫力としか言いようがない。木鼻は唐獅子と獏。肘木には、松の中の阿吽の鷹がいる。特筆すべきは、この彫り物のデザインは、宮津の中井家に残る五代目正忠の“彫物細工萬覚帳”に記載されていて、文化14年(1813)の1月晦日から1カ月かけて完成された。
中井権次研究家 岸名経夫

関連記事