第九


 今年の漢字は「北」に決まったが、筆者個人としては「九」。

ベートーヴェン第九交響曲の合唱の舞台に、6月に日本初演の地、鳴門市で2回、今月に大阪城ホールの「1万人の第九」、北はりま合唱団公演(加東市)と計4回立った。

 曲が流れるとドイツ語の歌詞が反射的に出るようになったが、まさしく“門前の小僧”で、意味は未だきちんと理解できていない。ベートーヴェンが、フランス革命の高揚の中でシラーが作った詩に感銘して構想が練られた作品なのに。

 「1万人の第九」演奏の前に、分かりやすく編訳した詩を俳優の小栗旬さんが空で読み上げた。「歓び、…お前のやさしい翼に抱かれてすべての者は兄弟になる」―朗朗とした声を耳にし、少しは詩に近づけたように思えた。

 1824年のウィーンでの初演は、多分合唱付きの珍しさもあって大喝采を受けたものの、2週間後の再演は半分ほどの入りだったとか。口コミが広がらなかったわけで、当時の聴衆には近寄り難かったのかも知れない。

 しかし、やがてワーグナーによって磨き上げられて「傑作」の地位を不動にし、後の世ではナチスの宣伝に使われもすれば、東西ドイツ統合の祝歌とも、EU(欧州連合)採択の「欧州の歌」ともなった。さて北朝鮮では、この曲が演奏されることはあるのだろうか。(E)