Categories: 丹波春秋

新の字

 「てふてふが一匹韃靼(だったん)海峡を渡って行った」。安西冬衛(ふゆえ)という詩人の一行詩だ。

一匹のかよわい蝶々が広大な海峡を渡る。イメージが豊かに広がるこの詩の題名は「春」。春はまさに、蝶のようにみずみずしい若者たちが大海原に乗り出す季節である。

 丹波地方の事業所でも、学業を終えたフレッシュマンたちが多く入社した。希望と不安に胸を高鳴らせているに違いないが、気になるデータがある。入社まもない期間の離職率だ。

 3年目までで離職する大卒者の割合はおよそ3割強、高卒だと4割前後。これは全国のデータだが、柏原職安によると、丹波地方でも同様の傾向という。

 「新」という字を思う。以前、漢字の意味を読み解いたコラムを弊紙で連載した柏原町の西楽寺住職、滝川秀行氏によると、新という字は元来、「木」と「辛」と「斤」からできているという。辛は、香辛料というように刺激の強いことであり、斤は斧を意味している。新を構成する3つの文字から、新しいことはいつも木を斧で切るような刺激を伴うものであると解釈できるとされた。

 新しい世界に踏み込むと、刺激を伴う。その刺激は辛いこともある。でも、それは新の字が教えているように、引き受けなければならない刺激であり、辛さだと覚悟することが必要な時もあるのでは。(Y)

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