Categories: 丹波春秋コラム

雨と乳房

 「あめあめ ふれふれ かあさんが」で始まる「あめふり」。母親がお迎えに来てくれるのがうれしくてならない。母親のさす蛇の目傘に入って家路につく。「ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン」。母親に寄り添う喜びが伝わってくる。

 雨とお母さん。無関係のようなこの二つの言葉には結びつきがあると詩人の吉野弘は見抜いた。「母という漢字は女に二つの点、つまり二つの乳房を加えた形だが、雨という漢字の中には四つも点がある。雨にも乳房があるのだ」。
 
 雨の中の点は乳房に違いないと吉野は思う。雨は、地上にある生命を育てる根源だからだ。吉野の詩に「雨の中にも/乳房がある?/そうです 数えきれない雨の乳房で/育つものは数知れず」とある。

 雨は、人を思案に導きもする。「ちゃんと耳をすませて雨の音を聞いてごらん。入梅もいいものだよ。人間にものを考えさせるために入梅というものはあるんだ」。井上靖の小説『欅の木』の主人公の独白である。
 
 「梅雨深し今日の日記も遺書めきて」(伊奈秀嶺)。梅雨の日にひとり閉じこもっていると、思案はともすれば沈鬱に傾きやすい。だからこそ雨に洗われたアジサイは、ひときわすがすがしく映るのだろう。梅雨時の沈鬱を取り払ってくれるアジサイは、母親のような花かもしれない。(Y)

Share

Recent Posts

劇研椎の実 9月29・30日に70周年記念公演

 敗戦から3年後の1948年、兵庫県丹波…

24時間 ago

一般社団法人「天内」代表理事 伊勢隆雄さん(篠山市大山上)

伝統作物の復興に尽力  兵庫県篠山市大山…

24時間 ago

FIX

 高校の同窓会を開くことになり、会場予約…

24時間 ago

案山子

 「山田の中の一本足の案山子」で始まる「…

24時間 ago

アカペラの頂点決めよう! 12月に全国公募コンテスト/兵庫・篠山市

 黒大豆や民謡「デカンショ節」で知られる…

24時間 ago