14歳

2018.06.10
丹波春秋未―コラム

『14歳からの哲学』という本が以前、反響を呼んだ。中学生向けに書かれた哲学書だ。「なぜ14歳なのか」。この疑問に著者の池田晶子氏は「すべての人は、14歳という年齢に質的な変換を遂げているから」と答えている。

背中に負っていたランドセルとさよならをし、中学入学時に買ってもらったダボダボの制服がなじみ始めた14歳の頃に、人は「ロゴス」に目覚めるというのだ。ロゴスとは言葉、論理という意味。言葉を獲得し、抽象的な思考をし始めるのが14歳の頃というわけ。

たとえば「生きる」という言葉の重みを理解し、「人はなぜ生きるのか」と理屈をこねるようになる。精神科医の名越康文氏も、「10代の前半というのは個性がもっとも先鋭化する。人生の中で一番賢い時期かもしれない」という。生きる意味を問うなど、真っ白な感性でまっすぐに思索するのは10代前半の特徴と言える。

しかし、中学校を卒業すると働きに出る同級生が少なくなかった昔と違い、14歳を取り巻く状況は画一的になったと、名越氏はいう。ロゴスに目覚めることは変わらなくても、学校や家庭を離れた世界、現実社会との接触が乏しくなり、経験の厚みが薄れてしまった。

この点、14歳が体験するトライやるは意義がある。人間的な成長に少しでもつながればと思う。(Y)

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