思い出の残る町に

2018.07.01
未―コラム記者ノート

 観光拠点化やホテル構想が柏原地域で話題になっているが、観光客を引き寄せる町歩きもポイントだろう。

 最近、重要伝統的建造物群保存地区の福井県若狭町の熊川宿に立ち寄った。若狭街道(鯖街道)の中継点として、昔の賑わいを感じさせる佇まいが魅力的だ。土産物店、カフェなどが並ぶ一角の民家が美術館に改装されていた。白壁の建物に似合わないような現代美術に最初はとまどったが、自由な雰囲気の絵に「心地よい違和感」を感じた。

 数日後、中井権次顕彰会総会で講演した福島貞道・福知山公立大学教授が「伝統建築や景観をどう活用していくかも大切」と話されたのを聞き、なるほどと感じた。

 若狭鯖街道熊川宿資料館の柱に張り付けられた日本画の大家、東山魁夷の書いた「古い家のない町は想い出のない人間と同じである」という文句を目にした。伝統文化を残しつつ、思い出に残るようなもてなしなど、新しい文化的雰囲気も練り上げたい。民芸品や本など郷土にまつわる品を置いたり、小さなスペースを工夫すれば、面白い発想も生まれる。「ぶらぶらと歩く町並み風やさし」。(臼井 学)

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