夏なのに早くも”紅葉” 幹に穴あけ昆虫侵入「ナラ枯れ」

2018.08.31
ニュース丹波篠山市地域

秋の紅葉のように葉が赤茶けた被害木が目立つ山林=兵庫県篠山市今田町で

夏の紅葉、ことしも―。兵庫県篠山市内で、体長5ミリほどの昆虫「カシノナガキクイムシ」(以下、カシナガ)が原因で、ナラやカシ類を中心とした樹木が立ち枯れる「ナラ枯れ」被害が広がりを見せている。今夏は特に自然林の多い同市今田町で目立っており、秋の紅葉のように葉が赤茶けた被害木が、深緑に覆われた山腹に違和感のあるアクセントを添えている。

「カシナガ」が大木を集中攻撃

ナラ枯れは、カシナガが病原菌「ラファエレア・クエルキボーラ菌」(以下、ナラ菌)を伝播することによって起こる樹木の伝染病。幹直径が20センチを超え、樹齢40年以上の木を好むため、大径木、老齢木が被害木となるケースが多い。

カシノナガキクイムシ(左がメス)=写真提供:(独)森林総合研究所関西支所

兵庫県がまとめた「ナラ枯れ被害対策実施方針」の資料によると、カシナガは、6―8月(主に7月)にナラ類やカシ類の幹に直径2―3ミリの穴をあけて侵入。もぐりこんだカシナガは集合フェロモンを出すため、狙われた木は大量のカシナガから集中攻撃を受ける。そのため、被害木の根元付近には、材内を掘り進み繁殖によって排出された木屑が大量に見られるようになる。材内に持ち込んだナラ菌が増殖することで木の通水障害が起こり、8―9月に枯死する。被害木すべてが枯れることはなく、コナラであれば3―5割が枯死してしまうという。

カシナガは孔道内に雌雄ですみ繁殖する。幼虫は越冬後にさなぎとなり、6月下旬ごろに羽化して孔道から脱出。飛び出した新成虫は、新たな生立木に侵入し繁殖する、という生活史を繰り返す。

 

カシナガがあけた直径約3ミリの穴。内部から掘り出された木くずが付着している

昨年は県でナラ約1万8千本分が被害

ナラ枯れは、兵庫県内では2006年度までは北部の但馬地域のみだったが、翌年、丹波市で発生。10年度には篠山市でも確認された。篠山市内における被害確認初年度(10年)の被害材積は154立方メートル。その後、右肩上がりに被害量が増えたが、13年度に下火に。しかし、15年度に“再燃”し、以後600立方メートルを超え700立方メートルに迫る大規模な被害が高止まり状態にある。丹波市では11年度をピーク(908立方メートル)に現在は沈静化しているもよう。

県内全域で見ると、昨年度は前年度比約2倍の被害量となり、被害材積は過去最大の約9200立方メートル(ナラ約1万7800本分)となった。

篠山市農都環境課は「何よりまん延を食い止めることが第一。被害木を伐採してシートで包み、その中に薬剤を入れてカシナガを駆除する『くん蒸』や、立木に粘着シートを巻いてカシナガの脱出を阻止する方法などがあるが、県とともに対策を立てていきたい」と話している。

県によると、カシナガは日本の在来種。昔から被害は出ていたが、1950―60年代の燃料革命により、薪や炭が使われなくなったためナラ類が大径化したことが被害増加の要因となった、としている。

コナラやアベマキなどのナラ類は、県内の雑木林に広く生息しており、里山の優れた景観の形成や生態系への重要な役割を担っている。ナラ枯れ拡大で、土砂流出防備などの森林機能の低下も懸念される。

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