鬼が架けた?巨岩の橋 広重描いた「鬼の架け橋」

2018.09.07
ニュース丹波市丹波篠山市

2つの岩の間に巨岩が橋のように架かっている「鬼の架け橋」=兵庫県の丹波市と篠山市にまたがる「金山」で

兵庫県の丹波市と篠山市の境にある「金山(きんざん)」(標高540メートル)山頂付近に、2つの岩の間に巨岩が橋のように架かっている名所がある。その名も「鬼の架け橋」で、地元では文字通り、鬼が架けたという民話が伝わっている。

民話「里に下りるため鬼が架けた」

兵庫丹波の森協会発行の「丹波(篠山市・丹波市)のむかしばなし第十集」の「鐘が坂の鬼のかけ橋」によると、昔、丹波の里に力の強い鬼が住んでおり、大空を駆け巡って風雨を起こしたりする不思議な力を持っていたという。

ある時、天上で遊んでいた天女の仲間に入ろうとした鬼だったが、怖がった天女に逃げられた。怒った鬼は宝物を奪い、天女もろとも、どこかに隠すことにした。ふもとの里に倉を見つけたが、下りるための橋がない。そこで金山に転がっている巨岩を組み合わせて橋を架け、里に下りたという。

こののち、里の人が、鬼が嫌がるという鐘の音を鳴らし、鬼を追い払った―と伝わっている。金山には「鐘(かね)ケ坂」という名の峠があり、鬼の民話から付けられたとも考えられるという。

歌川広重も描いた名所

歌川(安藤)広重による「六十余州名所図会」の中の「丹波 鐘坂」。写真の木版画は明治時代以降にすられたものと思われる(個人蔵)

山の尾根の土が風雨に侵食されて、巨岩が偶然に橋を架けたような状態で現れたとか、地震によって崩落した岩が橋のような形になったとも考えられている。この不思議な名所は、浮世絵師の歌川(安藤)広重が「六十余州名所図会」の中で描いている。

付近に明智光秀が築いた城も

金山山頂には明智光秀が築いた「金山城」の跡=兵庫県の丹波市と篠山市にまたがる金山で

鬼の架け橋近くには、戦国時代、明智光秀によって築かれた金山城跡がある。織田信長に丹波国の攻略を命じられた光秀が、手を組んで抵抗する多紀郡(現篠山市)の八上城主・波多野秀治と氷上郡(現丹波市)の黒井城主・赤井(荻野)悪右衛門直正の連携を分断させる目的で築いた城。現在でも同城跡からは八上、黒井の両城跡を望むことができる。

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