黒枝豆

2018.10.07
丹波春秋未―コラム

 30年前、丹南町でホロンピア88の「食と緑の博覧会」が開催された折、博覧会のPRに「丹波おいしい旅」という冊子が発行された。その中に黒枝豆の紹介がある。「一般市場に出回る白大豆や青豆の枝豆とはひと味違い、その特有の味は珍重されている」。

 当時、黒枝豆はまだ珍しいものだったことがわかる。しかし今では、多くの人が知る人気の産物だ。そうなった要因の一つが食と緑の博覧会の開催だった。

 来場者に黒枝豆を供したところ、初めて口にした人はその味に驚き、人気を集めた。都市部からバスで来た人たちは、博覧会場で買った枝付きの黒枝豆の枝を帰りのバスの中で落とした。おかげでバスの中は黒枝豆の残骸が広がり、運転手は閉口したそうだ。そんな黒枝豆のおかげで博覧会が口コミで広がり、大成功に終わった。同時に黒枝豆人気に火がついた。

 「天高く馬肥ゆる秋」。中国から来たこの言葉には、もともと不吉な意味合いがあった。北に住む遊牧民が秋になると、夏の間に生えた牧草を食べて元気になった馬に乗り、南のほうにできた小麦や米を収奪に来る。このため、この言葉には遊牧民の侵入に警戒しろ、という意味が含まれていた。

 黒枝豆をはじめ、おいしいものが出回る秋。遊牧民への警戒は不要だが、食べ過ぎには警戒を。(Y)

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