田んぼでおんぶ


 「ほんで、今年はいついけるんや?」―。毎年恒例、5月に父からのメッセージ。田植えの手伝いについてだ。

 父一人に任せて倒れられては困る。けれど、たまの休みくらい何もせずゴロゴロしたい。と、去年と同じ逡巡を経て今年も実家に戻った。

 手伝いと言っても、父が乗る田植え機を眺めながら、苗や肥料がなくなりそうになれば補充するか、畔の草刈りをするくらい。残りの大半は、田んぼの脇に腰を下ろしているだけ。

 何気なく田の土に長靴ごと足を突っ込んでみる。ぬぽっという感覚と冷たさを感じた。突然、幼いころの記憶がよみがえった。物心ついたころからずっと同じことをしていたからだろうか。年を重ねても変わらないものが土の中に眠っているとは思わなかった。

 苗の整理に軽トラックの荷台に上がる。小窓から見える車内には父と母の背中。なぜか、両親におんぶされているように思えた。少しだけ子どもに戻ったような、同時に少しだけさびしいような。複雑な気分になった初夏の日だった。(森田靖久)