落研出身、漫才師の経歴も 「法話グランプリ」出場の僧侶 「一緒に勉強する場に」


「H1法話グランプリ」に出場する安達住職=兵庫県丹波篠山市郡家で

 神戸市須磨区の須磨寺で6月2日に開催予定の「H1法話グランプリ」。宗派を超えて若手僧侶が法話を披露し、「また会いたくなるお坊さん」のグランプリを決める。出場する僧侶8人のうちの1人が、兵庫県丹波篠山市郡家の曹洞宗・長楽寺の安達瑞樹住職(44)。大学の落語研究会出身で、法話に入る前の”導入”として落語を披露することで知られ、かつて漫才師として芸能事務所にも籍を置いた経歴を持つ異色の僧侶。「法話は自分の経験したことに、お釈迦様ならどういう言葉で向き合われたかを聞いてもらう人と一緒に勉強する場」と言い、「他宗派の人と一緒に何かをできる機会は少ない。ともに楽しめれば」と笑顔で話している。

 同グランプリは、もともと栃木県の真言宗僧侶が発案。昨秋、兵庫県内の真言宗の若手僧侶たちが開催し、好評を博したため、今回は宗派を超えたイベントにした。

 7宗派から8人の僧侶が出場し、一般の聴衆も含めて「また会いたくなるお坊さん」を基準に投票してもらい、グランプリを決める。審査員長は相愛大学教授で、浄土真宗の僧侶・釈徹宗さんが務める。

 安達住職は京都府亀岡市出身。駒澤大学落語研究会に所属する傍ら、友人と漫才コンビを結成し、東京を中心に活動。芸能事務所にも所属し、テレビやラジオにも出演したことがある。

 「人を笑わせることに興味があった。関西人なので、どんな厳格な人でも笑う『吉本新喜劇』を素敵だと思っていましたね」

 一時は僧侶よりも芸能の世界を目指したが、「もっとおもしろい人がいくらでもいる」という現実を目の当たりにし、断念。帰郷し、曹洞宗大本山永平寺で修行に励み、長楽寺に腰を据えた。僧侶としての日々を過ごす中、落語をしていたという経歴を知った人から「敬老会で披露して」と声が掛かった。

 そして、自分の話で「笑い」を起こせるということとその楽しさを再確認。その後、「自分は落語家ではなく、お坊さん。落語をするなら、合わせて法話を」というスタイルを確立した。

 2011年に発生した東日本大震災後には、全日本仏教青年会の副理事長を務めていたこともあり、東北へ飛んだ。法要を営み、被災者の傾聴に取り組んだ。しばらくしてからは仮設住宅で落語も披露。「久しぶりに笑えた」という人もいるなど好評を博し、8年が過ぎた今も定期的に東北各地を巡る。

 被災地での活動については、「家がなくなったり、大切な人を亡くしたりと、想像を超える悲しさがあり、僧侶としても人としても呆然とするしかなく、考えさせられることばかりだった」と振り返る。ただ、「『笑う』ことは、少しでも日常が戻るということ。落語の時間も傾聴や茶話会の延長にあると思います」。

 そんな安達住職に、「H1法話グランプリ」への白羽の矢が立った。

 1人の制限時間は10分。落語をする時間はないため小噺程度で笑いを入れてから、いつも通り、自身の経験を交えた法話に入る予定だ。

 寺と住民の距離が遠くなりつつあると感じており、「コンビニと同じくらい寺がある。葬儀の時には縁ができるけれど、普段の生活の中でももっと頼りにしてもらいたい。そんな気持ちも込めてグランプリに臨みます」と言い、「『もう一度会いたい』と思ってもらえるようにがんばります」と意気込んでいる。

 イベントの詳細はホームページなどで。チケットは完売している。