【参院選】苦しむ地方の中小企業 「『働き方改革』は死活問題」

2019.07.13
ニュース丹波市丹波篠山市地域

8月16日に開催予定の「就職フェア」のPRチラシ。はたして求職者はどれほど参加するか

私たちの生活に直結する経済―。地方に圧倒的に多い中小企業は今、どのような状況に置かれ、どのような課題に直面しているのか。人手不足、人口減少、働き方改革などにまつわる兵庫県丹波地域の経済の現状を探った。

 

<人手不足>

8月16日、兵庫県丹波市の春日文化ホールで「就職フェアinたんば」が開かれる。来春の大学・短大卒業予定者も対象に、U・Iターン希望者らも含め丹波地域での就職を考えている求職者と、人材を求めている丹波地域の企業との合同面接会だ。

企業は24社を募集。約100社に呼びかけたところ、わずか2日で定員に達した。一方の求職者はどうか。ハローワーク柏原は、「阪神間の大学にも周知を図っているが、どれだけ来てもらえるか」と不安がる。昨年も、新卒予定者らが帰省するお盆の時期に同様のフェアを行ったが、参加企業24社に対して求職者は学生3人を含め計17人。名の知れた企業も多くあったが、求職者は企業数を下回った。人材確保に苦慮している企業の現状をまざまざと映し出した。

丹波地域管内の有効求人倍率は、今年5月で1・45倍。48カ月連続で1倍を超えている。求職者にとって有利な情勢は、企業側にとっては人手不足を意味する。

 

<人口減少>

住宅関連の製造業。5年ほど前は、自社説明会を開くと、1回につき20人ほどの学生がエントリーした。年間で延べ100人ほどの学生が説明会に来た時期もあった。「でも今は、説明会1回につき1人か2人です」と、同社役員。製造現場の人手は、高齢者や外国人の採用、機械化などで対応できるが、「将来、会社の幹部になってくれる人材の確保に苦慮している」という。

人材確保の課題に加えて、住宅市場の縮小傾向ものしかかる。縮小の理由は、人口減少。同社は大手ハウスメーカーを中心に小口の工務店とも取引しているが、いずれも国内。「10年ほど前から人口減少の影響を感じ始めた。内需に依存している企業は、人口減少の影響をまぬがれないでしょう」と話す。

消費税が10月から10%になる。5年前、5%から8%に上がったときは、駆け込み需要があった。ただ今回は、消費税アップに慣れ切ったのか、前回ほどの駆け込み需要が見られないという。

「業績の上がった上場企業が人材を確保する。そのしわ寄せが、地方の中小企業に来ている」といい、「人口減少時代を企業努力でいかに生き残るか。国に期待するところは、見当たらない」と言い切った。

 

<重なる難題>

衣服販売業。「客数が減っているのは、人口減少なのか、他社のネット販売の影響なのかはっきりしないが、人口減少がボディブローのように効いているのは確かで、厳しい環境にじわじわと追い込まれている」と、同社社長。

人材確保も大きな課題だ。あの手この手で募集をかけているが、正社員の募集にもここ2年ほどは、応募がゼロの状態という。企業規模からすると、明らかに人手が足りない現状に「働き方改革」がのしかかる。

同社の年間休日は105日。お客商売なので、毎日、店を開けざるを得ない。人手も足りない。105日の休日を消化するのも難しい現状に、有給休暇の取得や残業時間の規制などが求められている。「働き方改革は、中小企業にとって死活問題。守れば守るほど、締め付けになる。日本は中小企業で支えられているというが、中小企業に対するしわ寄せは高まっている」と切り捨てた。

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