ホテルの出店巡り賛否 活性化か景観維持か 国史跡の城下町内で


ホテル建設予定地のすぐそばにある重要伝統的建造物群保存地区の河原町地区=兵庫県丹波篠山市河原町で

 日本遺産やユネスコ創造都市のまち、兵庫県丹波篠山市の城下町地区にホテルが出店する計画を巡って、賛否が起きている。周辺に伝統的な町家群があることや、市が原則、開発を認めないエリアながら、「ホテルは地域の発展に資する」として例外的に認めようとしているためだ。建設予定のホテルは和調だが、景観の専門家などからは、「周辺環境に影響がある」「外観に配慮を」などと指摘される一方、地元住民の中には歓迎する声がある。活性化か、景観の維持か。行方が注目される。

 出店しようとしているのは、国内外でホテルなどを運営する「ホテルルートイングループ」。予定地は国史跡・篠山城跡を中心に広がる城下町内にあり、目の前には国重要伝統的建造物群保存地区に指定されている「河原町妻入り商家群」がある。

 建設予定地は西日本ジェイアールバスの所有地で、これまでは市がイベント用駐車場として借りてきた。

ホテルルートインが進出を予定する土地

 このエリアは、市が土地利用計画で、1000平方メートルを超える開発を「原則、認めない」としている場所。城下町内の景観を壊さないためで、市によると、これまでにも開発計画が持ち上がったことがあり、市が借りることで無秩序な開発につながらないようにしてきたという。

 建設が予定されている「ホテルルートイン丹波篠山」(仮称)は、地上3階建て。建築面積1565平方メートルで、客室数は119室。同社によると、シングルよりもダブルやツインが多く、観光地という立地条件から通常のビジネスホテルとは真逆の内訳にしたという。

 周辺に伝統的な町家が多いこともあり、ボリューム感を抑えるため、2棟の建物をT字型に配置して渡り廊下でつなぐ。また、外観のデザインは漆喰風の白い壁などにし、看板も和風のものにするという。

ルートイン側が提出したホテルの完成予想図

 今回の開発を巡っては、2017年、ルートイングループの永山勝利会長が、丹波篠山の街並みや景観を気に入り、建設を計画。その後、建設に向けて同社と市が事前協議を進めてきたほか、地元への説明会などを開催してきた。

 今後、市や県から許可が出次第、今年10月にも着工し、2020年9月末ごろの竣工を目指すことになっている。

 ところが、今年5月、市主催の説明会の場で、同市の元副市長、金野幸雄さん(63)が、予定地は市が「歴史環境形成区域」に設定しており、土地利用計画で開発できないとされていることにふれ、「違反ではないか」と指摘。「農村地域で土地利用をコントロールする制度を持っている場所はほとんどない。丹波篠山市はせっかく全国に先駆けた制度を持っているのに、守らないのはいかがなものか」などと、建設に反対する声を上げた。

 ただ、同市の土地利用計画には、「原則認めない」とあるのに続き、「ただし、地域の活性化に資する、また、産業の育成などにつながる場合は総合的に判断する」とあり、同市の酒井隆明市長は、「ほかの開発ならば断わるが、ホテルは市の観光まちづくりにとって非常に重要」とし、「ルートインには景観にも配慮していただけるので、よりよい開発にしていきたい」と建設を容認する姿勢を示している。

 市は6月から開発行為に伴う土地利用や景観形成に関して調査・審議する諮問機関「まちづくり審議会」を開き、議論を重ねているが、これまで2回の審議は意見がまとまらず、「継続」となっている。

 審議会では建築や景観の専門家らから、「ホテルが市の活性化につながることは理解できるが、低層階の町家群と隣り合っており、景観上、大きな影響を与える場所。3階建てというボリュームの建物ができるのは悪影響」などと批判的な意見が出ている。また、予定着工時期が迫っているため、「審議会に諮られる時期が遅い」という指摘もある。

 一方、地元住民でもある委員からは、「もともと整備されていない駐車場だったため、地元としては歓迎している。景観に配慮しながら、活性化につなげていくべき」などの声が出ている。

 また、一部からは金野さんが代表を務める団体が、城下町内などで古民家をリノベーションしたホテル事業にかかわっていることもあり、「自分の事業に影響するから反対しているのでは」という声もある。

 酒井市長は審議会での指摘を受け、ルートイン側にさらに景観に配慮した外観を求めており、8月中にも修正案が出される予定。修正案の内容を審議会で議論し、最終的には酒井市長が意思決定する。

 酒井市長は、「これまでから景観や環境を大切にしたまちづくりをしてきたという自負がある」とし、「しかし、町並みを守るだけでなく、活性化につなげないと市民の理解が得られない」としている。