ニューヨーク公共図書館

2019.07.18
丹波春秋未―コラム

 「ニューヨーク公共図書館」と言えば、映画「ティファニーで朝食を」で、ヘプバーンがボーイフレンドに連れられ初めて行って本の多さに驚いたり、「デイアフタートゥモロー」でマンハッタンが洪水に襲われ避難した人達が、極寒をしのぐため蔵書を燃やす衝撃的な場面を思い出す。

 重厚な建物が市の中心的な文化施設であることは違いないが、4つの研究館、88の分館をつなぐネットワークがかくも重層的に公衆に開かれて機能していることを、4時間かかる同名のドキュメンタリー映画で知った。

 講演、著者を招いての対談、読書会、コンサート等々の催し―図書館なら当然とは言え、本分館合わせて質量とも並々ではないのだ。様々なデータベースが無料で利用でき、就職フェアや障害者への住宅手配サービス、貧困子弟への読み書き教育、ネット環境のない人達への機器提供まで行う。

 年400億円の予算の半分が市から出るが、残りは民間の寄付。再三登場する幹部会議では市費が年々削られていることや、本を見に来るのではないホームレスへの対応など、様々な課題が明らかに。

 それでも、あらゆる場面で多種多様の肌の色をした人達が自由闊達に議論を交わす。「これこそが米国にふさわしい」と話すワイズマン監督。いかにも同国の底力を感じさせる。(E)

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