患者数「崩壊後遺症」から脱却 「新病院効果」で多い初診 新しい地域医療の船出(下)

2019.07.16
ニュース丹波の地域医療丹波市特集

病院見学会で手術室の説明をする藤田診療部長(右)=兵庫県丹波市、県立丹波医療センターで

医師数V字回復、常勤50人の大台に 大学・県からの派遣増 新しい地域医療の船出(中)

入院患者30人で開院した、兵庫県丹波市の同県立丹波医療センターの入院患者が11日、141人を数えた。一般外来診療を始めて3日目の10日には500人が受診、想定を上回っている。昨年度、県立柏原(県立)で1日50人ほどだった初診患者が連日120人を超えており、「新病院効果」が現れている。

診療機能は「崩壊前」の県立をほぼ上回っており、高度医療を提供するほど高くなる患者1人あたりの入院単価が、09年度の3万9453円から、18年度は5万2422円まで上昇していることがその事を裏付ける。

 

救急患者の受け入れ「24時間365日」

 

待合室の座席が足りないくらい患者が訪れている内科外来(画像の一部を加工しています)=兵庫県丹波市、県立丹波医療センターで

「崩壊」から干支一回り時間が過ぎるなかで進歩した医療の恩恵は、この地にも確実にもたらされている。

診療部長も務める藤田恒憲外科部長は、三田市以北で数少ない日本内視鏡外科学会技術認定医。安全性を確保しながら腹腔鏡手術の中でも新しい手術を積極的に導入している。産婦人科も、腹腔鏡手術などに長けた望月愼介部長の着任以降、それまで阪神間の病院に紹介していた患者の治療が自院で完結できるようになった。

脳血管疾患など受け入れ困難症例もあるが、救急専門医と研修医、各科協力のもと、24時間365日、心疾患を含む救急患者を受け入れている。昨年、県立は過去最多の1545人、柏原赤十字(日赤)も162人を受け入れ、2病院で06年より多くの患者を受け入れた。奥井稔・市消防署副署長は、「救急隊の第一交渉先は医療センター。明らかに、どの科も積極的に受け入れてもらっている」と病院の回復を実感する。それでも、搬送患者総数が増えたため、市内収容率は63%と依然低水準(06年は89%)。奥井副署長は「後は脳神経外科。入院の体制が整えば」と期待を込める。

 

開院で「医療崩壊」イメージ払拭を

 

統合前の県立柏原病院と柏原赤十字病院における、1日あたり入院の推移と、丹波市救急搬送者の推移

年々、平均在院日数(入院期間)が短くなっており、一概に比較はできないが、県立と日赤で「崩壊元年」の06年度、342人だった1日入院患者は17年度で220人にとどまる。06年度、丹波市民の占める入院患者の割合が3―4%だった福知山、西脇両市民病院への入院患者は、17年度で8%台(1日あたり計50人)。06年度、県立の入院患者の13・3%(1日34人)を占めていた丹波篠山市民は、17年度で6・5%(1日10人)と、一度離れた患者が戻らない「崩壊の後遺症」に苦しんできた。

院内では、開院が負のイメージを払拭し、後遺症から抜け出す絶好の機会と捉えている。齊藤芳樹・医療センター管理局長は、「来院頂いた方の信頼を獲得し、市外の病院にかかっておられる方にも今一度、地元の病院に目を向けて頂く機会にしたい」と力を込めた。

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