住民の意識変えた「あの日」 豪雨被災から5年のまち 森林整備や防災フォーラム開催


写真・容赦なく民家を襲う濁流=2014年8月17日午前8時52分、兵庫県丹波市市島町徳尾で

 2014年8月に兵庫県丹波市を襲った豪雨災害から間もなく5年を迎える。降り続いた豪雨の影響により、山は崩れ、川は濁流と化し、土砂や水が民家を襲い、尊い1人の命が奪われた「あの日」。それでも、地域の人は立ち上がり、復興に向け一歩一歩、ボランティアらの支援を受けながら歩き出した。復旧工事も大詰めを迎える中、被災した地域では、災害で得た教訓を生かそうと、森林整備など防災に力を注いでいる。

 

1時間に91ミリの猛烈な降雨

写真・変わり果てた集落の姿に言葉を失う住民=2014年8月17日午前8時52分、兵庫県丹波市市島町徳尾で

 同災害は、2014年8月16―17日にかけて発生。多いところで、1時間に91ミリ、降り始めからの累加雨量が419ミリを記録した。同市市島町前山地区を中心に山崩れなどを引き起こし、尊い1人の命が奪われた。

 負傷者は4人。住家の全壊は18戸、大規模半壊が9戸、半壊は42戸。床上浸水は169戸、床下浸水は784戸に上り、被害のほとんどが市島町内だった。復旧には全国からボランティアが駆けつけ、1万8000人以上が被災地で活動した。

 災害から5年が経過し、今年7月末時点での復旧工事の進捗状況は、県市合わせて370カ所のすべてで工事着手しており、うち366カ所が完了した。残すところは河川改良と、砂防事業の計4カ所となっている。

 

有志による山の「守り」

写真・地域の森林の「守り」をする有志たち=2017年6月18日午前11時9分、兵庫県丹波市市島町北岡本で

 同市市島町の北岡本自治会(黒田拓治会長)は、豪雨災害により床上浸水4軒、床下浸水17軒、倉庫・車庫への浸水15軒などの被害が発生。災害以降、地域住民が定期的に山に入り、間伐や植樹などをすることで、災害の少ない山づくりに取り組んでいる。さらには、いずれ発生すると叫ばれている南海トラフ巨大地震への対応を考えようと、公民館で「防災フォーラム」を開催。地域をあげて防災・減災に力を注いでいる。

 今後の災害を防ぐ意味で、地域の有志で山の整備を始めた。黒田会長(72)は「山を『整備する』というより『守り』をするというイメージ。できることをコツコツやっている」と言い、間伐材をストックヤード「木の駅」に出荷し、得た収益で食事会をしたり、日当にあてたりと参加者の“やる気”につなげる工夫も凝らしている。

 以前はうっそうとしていた山も、日が差し込んで明るくなり、新しい草や木が根を張っている。黒田会長は「『強い山』になっていると感じる。今後もずっと手入れを続けていく」と話す。

 

個人レベルの「防災」で身近な問題に

写真・南海トラフ巨大地震に伴う「1カ月間の停電」への対応を話し合う住民たち=2018年5月27日午後3時6分、兵庫県丹波市市島町北岡本で

 昨年と今年、公民館で開催した「防災フォーラム」では、南海トラフ巨大地震に伴う「1カ月間の停電」にどう対応するのか、それぞれが一個人の目線で考えた。大きな話でなく、「自分」「家族」など、身近な問題に落とし込んで考えることで、より具体的で効果的な対応策を練ることをねらったという。

 巨大地震が発生してから、1日目、1週間、1カ月と経過するごとに起きるだろう事態をあげ、「電化製品が使えなくなる」「日ごとに精神的に疲れが出てくる」「1カ月たてば命の危険性がある」などの意見があった。その上で個人や家族、自治会ができる対応として、「日常から非常食を準備しておく」「飲料水は井戸や川の水を沸騰させて飲む」「野菜や山菜を貴重な食料ととらえ、自治会が野菜栽培や山菜採集の講習を開く」などをあげた。

 黒田会長は「行政頼みでなく、自分たちでできることをしておくことが大事。食料は基本的に自分たちで準備し、いざというときに公民館に持ち寄るのがいいと思う。『災害に強いまち』を地域からつくることで、I・Uターンや企業誘致にも役立つはずだ」と語る。

 現在は地域にある「空き家」に着目しているという。発災の際、空き家を活用して避難生活ができるよう、所有者に許可を得ることを検討している。

 同自治会が取り組んだ防災フォーラムで出た意見をたたき台に、今年2月には同町吉見地区男女共同参画推進連絡会が防災セミナーを開催。一自治会の取り組みを校区に広げる形で実施したもので、防災意識が住民間で高まっている。黒田会長は「防災の前では性別や年齢は関係ない。それぞれが協力しないと災害を乗り越えられない」と話す。

 

防災は「先手打つこと大事」

 黒田会長は、「防災、減災のためには先手を打つことが大事。後手に回っては、自分自身や家族を守れない」と語る。近年、国内外で大規模な災害が頻発しているが、「昔に比べると、格段に便利な世の中になっている。だからこそ、災害への備えだってしやすいはず」と話す。一方で、災害への向き合い方が“甘い”と感じているという。「北岡本自治会は被災した経験がある。これを防災意識の向上につなげないと」と話している。