泣き暮らす

2019.08.11
丹波春秋未―コラム

 「おどんま盆ぎり盆ぎり 盆からさきゃおらんと 盆がはよくりゃはよ戻る」。よく知られた「五木の子守唄」の歌詞である。子守り奉公もお盆で年季が明ける。恋しい父母がいる古里に帰れる日が待ち遠しい、という意味の歌だ。

 民俗学の教えるところによると、日本の子守唄は、母親が子どものために歌う歌ではなく、10歳前後くらいの幼い娘たちが子守り娘として雇われての仕事唄らしい。「五木の子守唄」も、だんな衆の家に雇われた貧農の娘の、絶望的な忍従と内心の抵抗を歌ったものと言われている。不遇の環境に置かれた、いたいけな娘たちの悲しみが伝わってくる。

 子守歌は民謡の一つとされるが、当地の民謡と言えばデカンショ節。なかでも「デカンショデカンショで半年暮らす あとの半年寝て暮らす」が有名だが、明治40年頃、多紀郡教育委員会によって採集された盆踊りの歌詞を記載した「多紀郡誌」に、「あとの半歳なきくらす」とあるらしい。

 「寝て暮らす」のおおらかさとは対極にある「泣き暮らす」の情感。これは、酒造出稼ぎに出た夫のことを思う妻の悲しみを歌ったものとの説もあるようだが、「五木の子守唄」にひけをとらない切なさが伝わってくる。

 泣いて暮らした子守り娘が指折り数えて待ったお盆。丹波篠山でデカンショ祭が行われる。(Y)

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