好材料で地元学生つなぎとめる 「市民が守った看護学校」 学費安価、校舎新設などで志向強まる


写真・例年より多い、2日で130人の高校生らを受け入れたオープンキャンパス=2019年8月28日午後2時45分、兵庫県丹波市氷上町石生で

 一度は廃止が決定したものの、市民が知事に直訴したのが契機になり、県から市に移管された上で存続した同県丹波市の「市立看護専門学校」(同市氷上町石生)。「市民が守った」異色の学校は8月27、28の両日、完成したばかりの新校舎でオープンキャンパスを開き、高校3年生を中心に計約130人が集まった。遠くは山口県周南市からも参加者があったが、その多くは地元住民が占めた。学費面や設備面など、種々の好材料がそろったことが地域の学生の地元志向を強めた。

 同校の前身の県立柏原看護専門学校(同市柏原町柏原)は2011年10月、県の行政改革で、同県淡路市の県立看護専門学校と共に「15年3月末で廃止、13年度から新規学生の募集を停止する」と公表された。しかし、市民グループらが井戸敏三県知事に学校存続を要望する手紙を渡したり、直訴するなどして必要性を切々と伝えた結果、知事の決断で廃止から一転、市に移管しての存続が決まった。

学費安価、地元出身者多く

 オープンキャンパスでは、旧校舎だった昨年までは教室が狭かったため、1日50人に限っていたが、新校舎に140人を収容する視聴覚室が整備されたことから、今年度は希望者全員を受け入れた。

 看護学習体験や先輩との懇談があり、参加した地元の高校3年の女子生徒は「きれいで設備が整っている。受験を考えたい」と話した。市内の高校に通う娘の付き添いで参加した母親は「親としては、自宅から通ってくれると安心だし、月額2万円と学費が安いのも助かる」と胸の内を語った。

 現在の在籍者113人のうち、半数超の59人を丹波市と、隣接する丹波篠山市民が占める。県立時代の後期は、地元割合は3分の1程度だった。

 地元比率が高まった理由は、市立移管後、丹波市が市内の現役高校生5人程度の「地域枠」を設けたこと、学費が安価で自宅から通える上に校舎が新しくなり、新校舎の隣に県立丹波医療センターが新しくできたことがある。好材料が高校生の地元志向を強めた。

 

昨年の倍率は2倍、受験者増を期待
受験者数の推移

 受験者数の減少も要因。同校は「分析は難しい」としながらも、近年看護系の大学が増え、県内だけで看護系の学校が33校あるなど進路の選択肢が広がったことや、高校生の生徒数の減少などを要因に挙げる。

 一般入試の志願者数は県から市に移管される前の2014年を境に大きく減った(グラフ参照)。一旦、県が「閉校」とアナウンスしたため、市に移管され存続したことが県内に十分伝わらず、知名度が低下したと見られる。

 倍率は、13年4月に県立に入学し、卒業が16年3月の「市立1期生」は4倍超だったが、今年度の1年生(地域枠5人を除いた一般入試の定員は35人)は2倍だった。

 同校の荒木和美副校長は、通学できる範囲の高校の進路説明会では、「入りやすいので、あきらめずに勉強して受験して」とPRしている。看護実習はハードで、帰宅後に家族と話をしたり、家事を家族に助けてもらえる自宅通学できる環境は、学習する上で「大きな助けとなる」とし、「地元と近隣市町の意欲ある人をつなぎ留めたい」という。新校舎効果で受験生が増えることを期待している。

 

社会人にとっては「狭き門」

 全体的には「広き門」になっているが、社会人にとっては「狭き門」になっている。既卒者で今春入学した地元の女性(26)は、「入学すると社会人が思いのほか少なくて。受験会場にはもっといたんですけど」と、年下に囲まれ学んでいる。市立1期卒業生は入学時の同級生37人中、高校生が20人、既卒が17人と拮抗していた。この女性の同級生は、現役高校生が37人で既卒は3人にまで減っており、数年でようすが一変した。

 同校の入試偏差値は、県内看護専門学校の中間あたりに位置しており、受験科目の英数国に授業で日常的に接する現役高校生が入試に強い。