戦争の記憶

2019.09.05
未―コラム記者ノート

 終戦から74年を迎えた今年、戦争体験者から話を聞く「消えゆく戦争の記憶」を連載した。戦艦「榛名」の乗組員で、砲手だった松岡緑さん(93)=丹波市春日町下三井庄=を取材し、貴重なお話を伺った。

 これまで別の取材で何度かお会いし、断片的に戦争の体験談を聞いてはいたが、細部にわたる内容はおぞましく、松岡さん自身が話すのを躊躇したものもあった。

 「榛名」に乗艦時、敵機に襲われ別の砲手が負傷し、応援に駆け付けるべく甲板に出た際、目にしたのは散乱した味方の遺体。松岡さんが「生き地獄」と表現した惨状に、思わず身震いした。目を閉じれば状況が浮かんでくるようだった。

 先の大戦を想像するとき、「モノクロの世界」でしか思い描けない。当時の映像や写真もモノクロがほとんどで、遠い時代のように感じてしまうからだ。ただ、松岡さんの話はどれも色味を帯びていて、恐怖の度合いが増した。

 別れ際、松岡さんは「田畑さん、アンタ、今日いっぱい勉強しましたね」と笑った。かけがえのない授業を受けたと思っている。(田畑知也)

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