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2019.11.13
丹波春秋未―コラム

 今年のNHK紅白歌合戦に、久々に美空ひばりが登場するかもしれない。歌は新曲「あれから」。「愛しい人 あれからどうしていましたか」という歌詞。もし出たら、紅組の大勝は間違いない。

 「川の流れのように」の作詞者、秋元康が、若手作曲家に呼びかけて集めた200曲の中から選び、この歌詞を付けた。彼女がレコーディングした1500曲から、AIデザイナーが声を1秒当たり100個に分割して合成。

 1年がかりの作業だったが、ひばりファンからは「どこかもの足りない」「独特の力が感じられない」との指摘。さらに分析を進め、ひばりの声には「高次倍音」という、他の歌手よりずっと周波数の高い音が混じっていること、また音程やタイミングに微妙なズレがあることなどを突き止め、AIにさらに学習させた。

 同時に映像画面から口や歯の動き方を細かく把握、新曲にふさわしい髪型や衣装を長年関わった美容師やデザイナーの森英恵さんが担当し、ずっと憧れていたという天童よしみがひばりの身振りを演じた。こうして声と姿が完成。先日放映されたNHKホールの発表会場は全員涙にむせび、「ひばりちゃーん」の声が乱舞。

 AIの威力に改めて感服した。これが広く普及すれば、ひょっとして葬儀の様相など一変するやも。その時、坊さんは?(E)

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