「水上文学」受け継ぐ人々
視点 投稿日時 2005-03-24 (395 ヒット)

  「声聞くや行きつ戻りつ春になる」。 3月の半ば、 小雪の舞う若狭で催された 「幻夢一夜」 (げんむいちや) に参加した。 大勢の水上ファンがつめかけ、 故人をしのんだ。
 小説家の水上勉さんが故郷に作った若州一滴文庫のくるま椅子劇場には、 永六輔、 灰谷健次郎、 倉本聰、 筑紫哲也、 加藤登紀子、 石川さゆりなど親交のあった面々が一堂に会した。 「この中の一人を呼ぼうと思っても大変なのに、 水上さんの力はすごい」 という声が聞かれた。 代表的な小説といえば、 越前を舞台にした 「越前竹人形」 が知られる。 「日本紀行」 には、 篠山の風情をその土地の人との会話の中から引き出している。 青垣の高源寺のことを、 「鬼気にせまる禅機がみなぎり、身をおいただけで、 胆を洗う空気がある」 と書いている。
 名前は、 「『みずかみ』 というのが正しいのに、 東京の人が、 近郊にある水上 (みなかみ) 温泉が知られているので、 誤って読んだのを、 先生が訂正をしなかったので広まった」 とのエピソードが披露された。 「私は借り物の言葉を使っていない」 という生前の言葉も紹介された。 様々な流行語や造語があふれる今の社会を風刺し、 「どんなに下手でも良いから自分の言葉で語れよ」 と話しかけているようだ。 石川さんが涙で絶唱をした 「飢餓海峡」 は、 同名の小説がモデル。 加藤さんの歌と思い出話は心にしみる。 4月には、 竹人形の 「はなれ瞽女 (ごぜ) おりん」 が上演される。
 テレビ、 インターネットの普及で、 どこにいても情報を共有できる時代。 そんな時代だからこそ地域に根ざす文化を掘り起こし、 後世に伝えていく努力が求められる。 幻夢一夜は、 テレビの収録がなかった。 まさに夢のひととき。 「一滴文庫」 は、 地元の住民によるNPOが運営し、 精神を受け継ぐ。 いつまでも 「水上文学」 が風化しないように心に刻みたい。
(臼井 学)


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