母たちの物語

2018年02月08日

 忘れられない一言がある。スペイン映画「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999年)が日本で公開された時、高校時代からの友人が「まるで私の映画のようだ。最高の一本だった」と私に勧めた。その時観た印象は、ただただ何もかもがグロテスクで、圧倒的な嫌悪感が残っただけだった。もちろん、友人の言葉の意味は全くわからなかった。それよりも高校時代をずっと一緒に過ごしてきた友人の新たな一面を垣間見た感じがして、そのことが強烈な印象を残した。

 彼女は真面目で友だち思いで派手なところはなく、一歩一歩堅実に道を歩いていく性格だと思い込んでいたので、映画の登場人物たちのように赤裸々な欲望のまま生きていく人達とは、彼女は正反対の生き方をしているように見えた。その違いがとても不思議だった。けれども彼女のその言葉は、20年近く経った今でも、ふとした時に心の中に浮かび上がってくる。

 何度目かになるその映画を観た。母たちの物語である。母という立場で、様々な生き方をする人たちが出てくる。献身的な母、常識的な母、子どもを持たない母、子どもを失う母、全てを受け入れる母、性を超える母。圧倒的な母たちのそれぞれの物語だ。そして、幸せな母は少ない。

 19年前に映画が自身そのままだと言った友人は、その時も今も、子どもはいない。子を持った私は、その映画を今でも理解することができない。私の中で、ぽっかりと宙に浮いたままの彼女の言葉が繰り返されている。
(土性里花・グループPEN代表)

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