光と空間の家

2018年03月08日

 1月、2月と、あっという間に過ぎ去り、早くも3月である。年々、自分の時間の流れが人と違うのではないかと疑いたくなるような日々の速さだ。50年間があっという間だったのだから、あと50年なんてそれこそ瞬きしている間だろう。

 「死ぬまでにしたいこと」という映画があるが、自分は死ぬまでに何がしたいだろうと考えてみた。パッと思い浮かぶのが、「日本以外の国で暮らしてみたい」だ。夫とはお互いに仕事を引退したら、暖かいアジアで暮らそうと話している。私たちは財産もない代わりに何ものにも縛られない自由がある。2人で決めて2人でどこへでも行くことができる。今はそれが最大の夢で楽しみだ。

 次に思いつくのは、「水と山が見えるところに住みたい」だ。フランスで活躍した建築家ル・コルビュジエが自分の両親のために建てたというレマン湖畔の「小さな家」に憧れている。静かな夫婦の暮らしには最適で、小さいけれど機能的な佇まいの優しい家なのだ。若い頃は、私の永遠の愛読書である「吾輩は猫である」を執筆した夏目漱石の駒込の家に憧れて、駒込の高校にまで通ったけれど、今は畳の生活ではなく、椅子の生活がいいと思うようになった。あんなに憧れていたのに時と共に思考は変化する。不思議なものだ。

 その小さな家には、山と湖に向かって大きな窓があり、屋根には野生のゼラニュウムが密生している。死ぬまでに、光と空間を家族の一員とした、そんな家で暮らしてみたい。
(土性里花・グループPEN代表)

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