今年のフランツ藤井敬吾さん

2011.10.06
丹波春秋

 シューベルティアーデたんば(丹波の森国際音楽祭)の今年のフランツ(メーン奏者)はギターの藤井敬吾さん(55)。▼先日の公演の際、スタッフのAさんについて楽屋に行ったら、渡した名刺をまじまじと見られて、「もしかして、以前お会いしませんでしたか」。そう言えば、自分も彼の名を「どこかで見覚えのある…」という気がしていた。▼帰宅後、以前の新聞社の退職時に自筆記事をまとめた本を開くと、確かにあった。1991年、当時としてはトレンディだった「自宅で開くコンサート」で、ある民家の部屋いっぱい40人の客を前に藤井さんが、「次の『最後の夜明け』は、死刑を告げられ牢屋を出ていく囚人の気持ちを描いた曲。変な擬音が入りますが、弾き間違いじゃありませんからね」と話している場面が、鮮やかに蘇った。この時35歳。▼スペインの著名コンクールで連続1位を取り、様々な作曲も手がける彼は、演奏にはさむ語りも絶妙だ。丹波の会場でも「アランフェス協奏曲で有名な巨匠、ロドリーゴが審査する前で演奏した時、80いくつの彼が『俺の曲だ、俺の曲だ』とはしゃぐばかりで、ちっとも聴いてくれなかった。でも90歳を越えてもちゃんと作曲していた」といった調子。▼それにしても、藤井さんの記憶力に脱帽。折角復活した御縁を大事にしたい。(E)

 

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