器量

2011.10.22
丹波春秋

 マツタケの出だしが今年は例年よりも早いらしい。もしかすると今年は豊作かもしれない。とはいえ、今と比べて昔の豊作はスケールが違うのだが。そんな昔の、豊臣秀吉の話。▼京都の東山でたくさんのマツタケがとれていると聞いた秀吉は、マツタケ狩りを計画した。事前に家臣が下見に行くと、すでにマツタケは京の人に採られて、わずかしかない。秀吉を落胆させてはいけないと、家臣たちは手を尽くしてマツタケを取り寄せ、こっそり山に植えた。▼マツタケ狩りの日。秀吉は、たくさん生えているマツタケを見て喜んだ。ところが、秀吉。家臣が植えたものであることは先刻、承知だった。マツタケを苦労して植えた家臣を思いやり、知らぬふりをして子どものようにはしゃいで見せた。▼度量が広いことから、「大気者(たいきもの)」と言われた秀吉の一面を示すエピソードだ。部下を包み込む度量の広さは、上に立つ者の必須条件だろう。▼幕末の儒学者、佐藤一斎に「人を受け入れる器量のある人ならば、他人を責める資格があるし、人もその責めを受け入れる。しかし、人を受け入れる器量のない人は他人を責める資格がない。そもそも人はその責めを受け入れない」という意味の言葉がある。前半の部分はさておき、後半の部分は間違いなく真実である。(Y)

 

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