ドラマ「坂の上の雲」

2011.12.14
丹波春秋

 昨年来続くNHKスペシャルドラマ「坂の上の雲」が佳境を迎えている。司馬遼太郎の原作は日露戦争の死闘場面が延々と続き、筆者の貧弱な想像力ではなかなかに読み進み難いが、さすが画像は地形もよくわかり、迫力がある。▼ところで、年配の読者には思い当たる方がおありだろう。筆者小学生の頃、田舎の年長の従兄から「ニッポンの、乃木さんが、凱旋する、するめ、めじろ、ロシヤ、やまん国 黒畑…」と続く尻取り歌を教わった。▼全くわけもわからないまま調子をとって歌っていたので、いまだに脳裏に焼き付いている。自分の記憶はそこまでだが、やまん国は「山ん国」でなく「野蛮国」、黒畑はロシアの将軍「クロパトキン」。それから延々と続いて「…バルチック艦隊沈没し、死んでも守るはニッポンの」で最初に戻ることを、ネットへの投稿で知った。▼日露戦争の後、全国津々浦々に伝わったというこの歌からは、乃木さん人気のみならず、戦利品が国民の期待に沿わなかったことへの不満なども匂ってくる。▼柄本明が演じる乃木希典は飄々としながら、なかなかの風格だ。筆者にまで歌が伝わったのは、その戦争後50年の昭和20年代末。それからまた50年以上。現在のテレビ画面に登場する政財界人らを見ると、実に「明治は遠くなりにけり」と痛感する。(E)

 

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