第九

2011.12.22
丹波春秋

 三木市文化会館でベートーヴェン第九交響曲の合唱に、丹波の森ホールで歌って以来9年ぶりに出演。同市では25年間、毎年開かれている。120人と共に大阪フィルハーモニーをバックに気持ちよく歌え、往復2時間半かけて練習に通った甲斐があった。▼指揮者の新通英洋さんは、原詩の「歓喜に寄す」をシラーが作ったフランス革命前夜の空気や、彼に傾倒し30年かけて曲想を暖めたベートーヴェンの思いなどについて話し、「詩への気持ちを込め、客にも伝えよう」と強調された。▼怒涛のように突き進む箇所、祈るように荘重な部分、各パートが戯れるように追っかけ合う場面など様々に変化し、祭のように賑やかに大団円となる。交響曲に合唱を乗せるという画期的な試みを華麗に成し遂げたべートーヴェンの奇才をつくづく感じる。▼しかし1824年の初演時は、劇場や歌い手が二転三転し、舞台裏は直前までドタバタした。合唱のない第2楽章には拍手喝采が鳴り響いたが、合唱部は練習不足だったせいか、聴衆の心にどこまで伝わったかどうか不明(中川右介著「第九」)。半月後の再演は半分も埋まらなかったとか。▼「長くて何やら難しい」との評がつきまとったこの曲に、ワーグナーら後の音楽家が再び光を当て今日に至らしめたのは、やはり奇才のなせる業か。(E)

 

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